校舎の中で1番人目につかない所を必死で探した。
涙を誰かに見られないように。
片思いしてた彼に彼女がいることを知ったのは昨日。
その噂は嘘だと信じて今日学校に来てみると、どうやらその噂は本当だったみたいで噂の彼女と仲良く歩いているのを見てしまった。
すごくショックだったからか、目の前が真っ白になって視界がぼやけてきて、気がついたら走り出していた。
前を見ずに走っていたからか、曲がり角で誰かにぶつかってしまう。
「っ…ごめ、んなさ…」
「うおっ!!わりぃ!!…って神谷?」
顔を上げると同じクラスの伊佐敷くんと結城くんが立っていた。
「あ、伊佐敷くん…ごめんね…」
「おいっ、どうしたんだよ」
「な、んでも…ないよ」
「なんでもない。と言う顔をしていないな」
「結城く、ん…ごめ……本当に、大丈夫…だからっ」
そう言って2人の間を通り抜けて私はまた走り出した。
また下を向いてとりあえず走った。
気がつけば屋上に来ていた。
周りを見渡すとどうやら誰もいないみたいだった。
そうわかった瞬間に我慢していた涙がブワっと溢れ出てきた。
「っ…く、はぁ…」
対して仲が良かったわけでもなかったのに、どうしても悔しくて仕方なかった。
「ど、して…もぉ、やだぁ…」
涙は全く止まってくれない。
座り込んでできるだけ声は出さないようにしようと思うものの、嗚咽が漏れ屋上に響いた。
「おい…神谷」
「っ!!」
急に声をかけられてゆっくり振り向くと伊佐敷くんがいた。
「い、さしき…くん……どう、して?」
「いや…お前が泣きそうなツラ…してっから、心配になって…」
「そっか…」
「…何かあったのか?」
伊佐敷くんは顔が怖い。とか言って苦手だって言う人が多いけど実は優しいっていうのは知っていた。
困っている時はいつも助けてくれるとても優しい人。
こうやっていつも気にかけてくれてた。
こんなこと伊佐敷くんに言ったら笑われちゃうかな。と考えるものの私の口は自然と動いていた。
「…好きな人に……彼女がいる、って…それで、ね…噂だ、って信じでたけど…」
「もういい」
「伊佐敷…くん?」
そう言って伊佐敷くんは私を抱きしめた。
いきなりのことでビックリしたけど、伊佐敷くんの臭いがとても落ち着いて止まりかけていた涙がまた流れ出した。
「っ…く、やしいよぉ…」
「おう…」
「ど、して…もう、っ…ツラい…」
「おう…」
「見たく、なか、った…」
「神谷もういいって」
「で、も…」
「そんなにそいつのこと好きだったのか?」
「う、ん…」
「すぐ忘れらんねぇかもしんねぇけど…そんな奴じゃなくて俺にしとけよ」
prev next