ダイヤのエース | ナノ




「っ、はぁ、はぁ…やっと、会えた」
「やっとじゃないよ…洋一が帰って来ないだけじゃん…」
「わりぃ…そうだよな、でも…会えて嬉しいぜ」

私も。と言ってあげたらきっと喜ぶだろうし、本当は言いたいのに何かが私の邪魔をして言わせてくれない。

「…洋一」
「汗臭いと思うけど…ちょっと充電させて」

そう言い終わるよりも前に洋一は私に近づいてきてそっと私を抱きしめた。
洋一が気にする程汗の臭いはしなかったし、それよりも洋一の臭いがしてすごく安心した。

「俺さ…ちゃんと連絡返せねぇから…きっと心配かけたと思う」
「うん…そうだね」
「本当ごめん…」
「うん…気にしてないよ」

いつか言われたことがあった。
たまにはワガママ言ってほしいって。
でもあんな頑張ってる洋一を見たら言えないよ…。

「蒼唯ワガママ言っていい?」
「なぁに?」
「俺…頑張るから…信じてほしい。ずっと蒼唯のこと思ってるから…よ。」
「ん、ありがと…」
「蒼唯は?何かねぇのか?」

また強くぎゅっと抱きしめる腕を強くしながら頭を撫でてくれる洋一。
確か青道の寮に行く前もこうやって抱きしめながら頭を撫でてくれたよね。
お互い離れても頑張ろうねって言いながら泣いたよね。

そんなことを思い出したら急に涙が出てきた。

「よう、いちぃ…」
「どうした?」
「…さ、みしい………」
「っ!!」
「ずっと、待って、たし…忙しいの、はわかってる…けど、ね…」

もう良い。と言って私の唇を洋一の唇で塞がれる。
触れるだけのキス。何回も何回も振ってくるキスの嵐に私はまた涙を流した。

「泣くなって…俺蒼唯の笑ってる顔見たい」
「う、ん……」

笑え。なんて言っていきなり笑える程私強くないよ。
ずっと泣くのも我慢してきたのに、洋一に会えるとこんなに泣き虫になっちゃうんだね。




あなたの声が聞きたくて



洋一の言葉一つで私の強がりなんて消えてしまうんだ。



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