ダイヤのエース | ナノ




こうやって洋一が野球しているとこを見るのは2年ぶりだと思うけど、うんと上手になってるのが私にはわかった。
昔のようにキラキラ輝いてて、凄く楽しそうに…いや、昔よりもずっと楽しそうに野球をしている洋一を見て、何故かとても距離を感じた。

「倉持、すごいね」
「そうだね…」

こんなに近くにいるのに、私はきっと声をかけることができないと思う。
今私の目の前にいる洋一は私にとって全くの別人のように感じてしまったから。

「勝ったね」
「そうだね…」
「声かけておいでよ」
「いや、いいよ。洋一も気づいてないだろうし…帰ろ」

そう言ってベンチから立ち上がって帰ろうと思い歩き出すと後ろから蒼唯!!と叫び声が聞こえたけど、今はどうしても会いたくなかったのでその声を無視してそのまま歩いた。

「倉持呼んでたよ?」
「いいの…今は会えない…」

後悔しないの?と言われてたけど、後悔しないわけない。
逢いたくて仕方なかった洋一にやっと会えたのに声をかけないで帰ってしまって、後悔なんてしないわけないじゃない。

駅に着いてふっとケータイを見ると丁度洋一から着信が入っていた。

「はい…」
「蒼唯!!今日青道来てただろ!!」
「うん…今帰るとこ」
「俺気づいて声かけただろ」
「ごめん気付かなかった」

嘘、ちゃんと洋一の声聞こえてたよ。
でも今は…振り向いちゃいけないって思ったの。

「俺今から駅行くから待ってろよっ!!」

そう言って洋一は電話を切った。
友達にも聞こえていたみたいで、先に帰るからちゃんと待ってな。と言われた。
きっとここで帰ってしまったら洋一が友達に連絡をするだろう。と諦めて私は駅前のベンチに座った。

中学3年の時は急に荒れ出して大変だった。
推薦も取り消されて本当に一時期はどうなってしまうのかと思った程、洋一は変わってしまったと思っていたのに、違う方向で変わってしまった洋一にどう接していいのか頭の中が混乱していた。
会ったところで何を話せばいいんだろう。

「蒼唯っ!!!」

顔を上げると、遠くからでもわかる。
ずっとずっと見てきた私の大好きな洋一が、私のために走って来てくれたのがしっかり見えた。



prev next
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -