「俺さ、あの時マジどうにかしてたと思う」
「うん…そうだね」
「推薦取り消されて…バカだよな」
「…うん」
「でもこうやって青道で野球できてよかったって思ってる」
「バカやっててよかったって言いたいの?」
「ちげーよ。」
「じゃあ、何よ」
「ここでなら甲子園が夢じゃなくなる」
そう言った洋一の顔は真剣そのものだった。
「俺…バカやってたけどよ…蒼唯との約束忘れたわけじゃねーから」
「え、嘘…」
嘘なんか言うかよ、バーカ。と頭をペシっと叩かれたけど、そんなことより洋一が約束を今でも覚えててくれて嬉しかった。
何故だかわからないけど、自然と涙が出ていた。
「お、おい!なんで泣いてんだよっ!」
「だ、って…忘れた、って思って…」
あーもー!と言って頭をガシガシとした後に洋一がそっと抱きしめてくれた。
砂埃と汗と昔とは違う男の子の匂いがした。
「ちょっと!!」
「俺…甲子園行けたら連絡して見に来いって言うつもりだったんだよ…」
「今更じゃん…」
「そうかもしんねーけど、心配かけて迷惑もかけちまったから…俺なりのけじめのつもりなんだよ」
「何それ…でも洋一らしい…」
クスっと笑うと安心したかのように洋一も笑ってくれた。
「俺さ…ずっと蒼唯のことが好きだった、今も」
「えっ…」
驚いて洋一の顔を見上げる。
昔は身長も変わらなかったのにこんなに身長差ができていて、声もどんどん低くなって、身体もずいぶんガッチリして…もう私の知らない洋一だった。
「なぁ…蒼唯は?」
「私は………」
貴方が本気で見た夢「私も洋一のことずっと好きだったよ、バーカ」
「ヒャハ!知ってる!」
「し、知ってるって…!!」
「ちゃんと甲子園行くからな」
「うん…頑張って、洋一」
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