しばらく歩いていたが、変なことを言われてしまった為変に緊張して話せなかった…。
いつもはそんなに遠く感じない距離なのにとても遠い道のりに感じていた。
「今日…どうだった?」
「あ、みんな凄かったよ」
「そうか…」
そう言ってまた伊佐敷は黙って歩き出した。
なんかちょっと不機嫌な気がするのは私のせい…だよね?
「あのよぉ…」
「どうしたの?」
「俺には…カッコイイとか言ってくんねーの?」
待って。
え、目の前にいるの本当に伊佐敷なの?
スピッツだとか狂犬だとか言われてる、あの騒がしい伊佐敷なの?
今の発言を聞いてまるで別人なんじゃないかと思ってしまうほど彼は大人しかった。
「えっ…あの……伊佐敷が1番カッコ良かった…よ」
「は、お前…なんて…」
「い、今の無しっ!!!なんでもないっ!!」
言ったものの急に恥ずかしくなって来て伊佐敷から逃げるように歩こうとすると急に伊佐敷に腕を掴まれる。
イキナリ捕まえられたものだから私は体制を崩してしまい後ろに転びそうになる。
「きゃっ!!」
「っ!っぶねー…わりぃ、大丈夫か?」
いつもより伊佐敷の声が近くに感じるし、背中に体温を感じて上を見上げてみると伊佐敷の顔がすぐ近くにあった。
転びそうになった私を支えるために伊佐敷に抱きしめられていた。
それに気がついて顔がボっと暑くなる。
「あ、ごめんっ!!」
そう言って伊佐敷から離れようとすると掴んでいた腕をぎゅっと強く握られそのまま聞けよ、と言われる。
「俺…興味ない奴に試合見に来いとか言わねーから…」
「練習試合じゃん…」
「うっせー!!こうやって送ったりもしねー!!」
知ってる。貴子が1年の時の話してくれたもん。
「でも誘ったのが伊佐敷だったからでしょ…」
「それだけじゃねーよっ!」
ぎゅっと伊佐敷に腕が前に回ってきてぎゅっと強く抱きしめられる。
試合の後だからか、砂と汗の臭いがする。
きっと伊佐敷以外の人なら嫌だと思うハズだけど伊佐敷が頑張っていたと言う証拠のこの臭いは嫌だとは思わなかった。
「好きだ…神谷のことが」
「っ!!!」
肩に頭を乗せられてそう耳元で呟かれて何も思わない女子はいないんじゃないかな。
それとも相手が伊佐敷だから余計なのかな。
「神谷は…どうなんだよ…」
「わ、私も…伊佐敷のこと…好き」
全てが輝いたいつもうるさい彼の告白は静かで…とてもロマンチックな告白。
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