ダイヤのエース | ナノ




「一也っ、痛いって!!」
「…………」
「痛いって、ばっ!!」

どんどん私の腕を掴む力は強くなるし、歩く速度も早くなって私は着いて行くのに精一杯だった。どうして一也が怒っているのかも理解できなくて、自然と涙が出てきた。
一也に連れられたまま連れて来られたのは屋上だった。

「なんで倉持とあんな楽しそうにしゃべってんの?」
「なんで、って…いいじゃん。一也には、関係ない…」
「ふーん…俺じゃなくてもいいってこと?」
「ちがっ!!」
「じゃあ何?」

こんなに冷たい目をしてる一也を初めてみたかもしれない。
どれだけ練習が辛くても、試合で負けてしまっても、絶対に私には態度に出したりしなかったのに、どうしてこんな冷たい目をしてるの?恐怖で私の頬を伝う涙は止まることをしらない。

「…ごめん、泣かせるつもりじゃなかった」

そう言ってさっきまで強く握られていた手を離して、そっと抱きしめられた。
一也のワイシャツに涙がついちゃうと思って離れようとしたけど、優しくそれでも強くまた抱きしめられた。

「俺さ、今余裕なくて…もっと蒼唯との時間大事にしたいって思う反面、どこかで焦ってた。だから倉持と一緒にいるの見てムカついた」
「かず、やぁ…」
「ごめん、思ってたより俺嫉妬深いかも…な」
「そ、んなこと…ない」
「ごめん、重くても蒼唯のこと離したくない。こんな俺イヤだよな…」
「イヤじゃ、ないよっ!!わた、し、一也のこと…好きぃ…」
「ありがとう…」





ありきたりでいい





「俺も蒼唯のこと大好き…だからな」
聞きたい言葉はありきたりでよかった。この言葉だけで私の不安はそっと消えていった。



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