「ゲームセット!!!」
グラウンドに響いた声に私は頭が着いて行かなかった。
青道が、決勝戦で負けた。
グラウンドを見ると純が泣き崩れていた。
純、純が悪いんじゃないよ。誰も純を責めたりしないよ。
今すぐにでも駆けつけたいのに私の身体は動いてくれない。
全然言うことを聞いてくれない。
まるで時間が止まってしまったかのように私には全てスローに見えた。
整列して、挨拶が終わって結城があいさつに来て…周りは移動してるのに私はまだ動けないでいた。
「蒼唯…行くよ」
貴子にそう言われても私の身体は動いてはくれなかった。
スタンドのみんなにも声かけられても私はグラウンドから目を逸らすことができなかった。
「蒼唯」
「じゅ、んっ」
一向に動く気配のなかった私の元に純が来てくれた。
試合が終わったばかりの選手に…私は何やってんだろ。
「帰るぞ…」
「…じゅ、純……まだ、」
「終わったんだよ」
「っ…!!」
やっと純の顔を見ることができた、目が赤くなっていた。
そりゃあれだけ泣いていたんだもん、仕方ないよね。
「俺たちの…夏は終わったんだよっ!!!」
きっとまた思い出してしまったのか純の目に涙が溜まっていた。
「純っ、ごめん…」
「何、謝ってんだよ……俺こそっ、甲子園…」
「純っ!!」
「っ!!」
スタンドだと言う事忘れて私は純をギュッと抱きしめていた。
純の涙が誰にも見られないように強く…強く…。
「純、すっごいカッコよかったよっ……ありが、とう」
そう呟くと純はまたそっと泣き出した。
悔しかったね、苦しかったね、たくさん練習したね。
いつもグラウンドで吠えてた純は私にとっては誰よりのカッコイイ私のヒーローだったよ。
音のない世界私達はそのまま2人で声を出して泣いた。
純、ありがとう…お疲れ様。
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