■ 明日世界が滅びるの
◎ゼロの封印
「ゼロ!!」
僕が駆け付けた時には、既にゼロの封印が始まっていた。
忌々しい機械音。
君と僕を引き離そうとする音だ。
「エックス様!」
腕を掴まれる。
ゼロの封印を請け負った技術者か。
嗚呼、君まであと少しなのに。
無理矢理歩を進める。
掴まれている腕がミシリと嫌な音を立てた。
技術者のくせに力が強い。
振り払う暇も惜しく、ズルズルと引き摺りながら前進した。
「っゼロ!」
「…エックス、か」
ゼロの傍まで来ると流石に観念したのか、技術者は手を離した。
直ぐ様ゼロに駆け寄る。
「どうしてっ…君が!」
封印されなきゃならないんだ。君は世界を救ったんだ。称えられこそすれ、疎まれる謂れは無い。
「止めてくれ…ゼロ…!」
ぎゅっと、ゼロの手を握る。
冷たい。
機能が停止し始めているのか。
「ゼロ…っ」
「エックス…これで、良いんだ…」
だから、泣くな。
握った手を一撫でされて、君が回線を切る音がした。
後に残ったのは人形みたいに動かない君のボディだけ。
そっと君から手を離すと、軽い作動音と共にカプセルが閉じた。
(君のいない世界なんて、)