■ 執事とメイド服
◎変態執事
 正直すまんかった…









「どうだ? 似合っているか、フェンリッヒ」
そう聞くのは、黒いメイド服に身を包んだヴァルバトーゼ。クラシックなそのスカート丈は慎ましくあるのだが、逆にその長さが不埒な心を擽る男のロマンの一つでもある。

一見防御の固そうな重苦しい黒のロングスカート。しかしその実、悪戯な風でも吹けばいとも簡単にはためいてしまう。それを手で押さえ付ける乙女の恥じらう姿もクるものがあるのだが、男性諸君、そこで満足してはいけない。風が吹いた瞬間に覗く白い芸術…。そう、可憐なレースに装飾されたそれは芸術である。そして汚れのない白、純白でなければならない。桃色や水色…むしろドぎついピンクでも別にいいじゃないかと思う輩もいるかもしれない。しかし、考えてもみたまえ。古き時代より純白とは汚れなき色、即ち処女性を秘めているということであり、その色を盗み見…もとい垣間見る事こそ、その聖域を汚し踏みにじる行為と錯覚し罪悪を感じると共に愉悦を感じずにはいられないのだ。これがピンクやら水色やら軽々しい色のミニスカートであったなら、純白の芸術でなかったなら、不可侵の聖域的神聖さは激減し満足のいく快楽は獲られぬだろう。ミニスカメイドが駄目だとは言わない。しかし私は、クラシックこそ究極のメイド服であると主張しよう!!

…ごほん。話を戻せば、つまるところ男のロマンを引っ提げたヴァルバトーゼがフェンリッヒの目の前にいるということである。
フェンリッヒは無意識の内に喉を鳴らした。そのままヴァルバトーゼに手を伸ばそうとするが、悲しいかな、理性が邪魔をした。触れきらない内に手を仕舞う。そしてフェンリッヒは唇を湿らせ、ヴァルバトーゼの姿にあてられた身体を押さえ付けながら問うた。
「……閣下、その格好はどうなされたのですか?」
するとピタリ。スカートを自主的にはためかせていたヴァルバトーゼは俯き、そして肩を震わせ始めた。
「おまえが……」
「…はい?」
「おまえがそう望んだからではないかっ!」
再び顔を上げた時、ヴァルバトーゼは目に涙を溜め、気が高揚しているのだろう頬を染めていた。
「っ…ヴァル様!」
ギリギリ保っていた理性もヴァルバトーゼのその姿には敵わず、フェンリッヒはヴァルバトーゼを抱き締めた。
「ご安心ください。とても似合っております、ヴァル様」
「フェンリッヒ……」
ヴァルバトーゼは「嬉しい」と囁くように言い、自分を抱くフェンリッヒの胸に顔を埋めた。
「お前の…好きにして、良いのだぞ」
先程よりかは音量を高めに、しかし小さく呟かれた言葉。だが、フェンリッヒの耳にはしっかりと届いていた。その言葉の真意を問うのも煩わしく、フェンリッヒは荒々しくヴァルバトーゼに口付けた。
「っ……ん…」
早急な行為に驚いたヴァルバトーゼは反射的に身を捩るが、フェンリッヒに押さえ付けられてしまう。その間にもフェンリッヒはヴァルバトーゼの唇を割り、舌を侵入させた。舌が尖った犬歯をなぜる感触につい歯を開いてしまう。その隙をついてフェンリッヒは更に深くへと舌を進め、絡める。ヴァルバトーゼは息苦しさにフェンリッヒを押し退けようとするが、力の抜けた状態では敵うはずもなく。解放された時には意識が朦朧としていた。好都合とばかりにフェンリッヒはヴァルバトーゼを後ろから抱え込み、スカートの前を捲り上げて裾をくわえさせる。先程のキスで熱に浮かされたヴァルバトーゼはそれを大人しく甘受した。その姿に気を良くしたフェンリッヒはヴァルバトーゼの自身に手を伸ばし、下着越しに触れる。
「フェンリッヒ…や、やめっ…」
「『好きにして良い』のではなかったのですか? ヴァル様」
フェンリッヒは笑いを滲ませて言ながら、指を撫でるように滑らせる。ヴァルバトーゼはその緩いが効果的な刺激に身体を震わせ、フェンリッヒに背を預けた。
「ッ……随分と、意地悪い物言いではないか…」
「申し訳ありません。閣下があまりにも可愛らしいので、つい」
「…男に可愛いなどと言うな」
ヴァルバトーゼは頬を染め、素っ気なく言い放った。その反応にフェンリッヒは口角を緩く上げて、ヴァルバトーゼ自身への愛撫を開始した。最初は優しく、焦らすように擦り上げる。案の定ヴァルバトーゼはフェンリッヒに抗議しようと口を開きかける。その時を見計らって、フェンリッヒは指の腹でヴァルバトーゼの先端を強く一撫でした。
「ッああ……!」
その刺激で達してしまい、直後の倦怠感に粗く息をつき放心状態のヴァルバトーゼ。フェンリッヒは彼が意識を戻さぬ内にと、放たれた白濁を指に絡め、彼の中へとその指を進めた。
「ッ…た、い……」
「大丈夫、直によくなります」
フェンリッヒは固く閉ざされていたなかを優しく解していく。その為かヴァルバトーゼが痛みを感じる事はなくなったが、異物感だけは拭えず彼の身体は強張ったままだった。しかし、フェンリッヒの指がある一点を掠め、ヴァルバトーゼはその感覚に身を跳ねさせた。
「あ……そこ、は…」
「……ここ、ですか?」
「ッ……! 止めッ…フェンリッヒ…!」
ヴァルバトーゼの言葉を無視し、フェンリッヒはその一点を攻めた。溢れ出る声に羞恥を煽られたヴァルバトーゼは声を抑えようと唇を噛むが、それを見たフェンリッヒが与える刺激を強めるから、声を止めることはできなかった。
そうして高められた身体は、後少しというところで指を抜かれ止められた。
「あ……」
「…もっと、欲しいですか? ヴァル様」
「……欲しい……フェンリッヒ…お前のが、ほしい…」
その言葉を最後まで聞き終えたフェンリッヒは、自らのものを取り出した。既に限界まではりつめていたそれを先程まで指で犯していた所へとあてがい、負担をなるべく掛けぬようにゆっくりと侵入させていった――










* * * * *





「ゆ、夢……?」

夢から醒めたフェンリッヒの布団の中がどうなっていたかは……想像に難くないだろう。


おわれ。





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