■ あるレプリロイドの夢




しとしと、ぽちゃん。


しとしと、ぽちゃん。











気付けば、知らない場所に居た。辺りを見回しても、灰色ばかりで。メモリーから探してみたけど何も検索されなかった。幸いひとつも気配を感じないから襲われる心配はなさそうだけど。
でも、不思議。自分の部屋で寝ていただけなのに。ああ、それか、もしかして。これが、エックスの言っていた夢だろうか。もしそうなら、自分はとても貴重な体験をしている事になるけど。自分は夢を見たことが無いから。もしかしたら見たことがあるのかもしれないけど、覚えて無いくらい少ないのだから、どっちにしても貴重だ。でも残念ながら、夢か現かの見分け方は知らなかった。
じっとしていてもしょうがないので、取り敢えず辺りをもっとよく見回した。












しとしと、ぽちゃん。


しとしと、ぽちゃん。











視界にちらつく赤い色。少し離れた処から自分を取り囲むように、それは置かれていた。何だろう。視界が悪くて、良く見えない。好奇心の赴くまま、散らばっている内の1つに近づく。何気無しに拾い上げてみた。












しとしと、ぽちゃん。


しとしと、ぽちゃん。











ソレは球体に近い形をしていて、赤黒い何かで覆われていた。何だろう。ふと、視界に金色がちらついて、目を向ける。瞬間、後悔した。赤黒く汚れてはいたが、その綺麗な金髪は紛れもなくゼロのものだった。恐る恐るその球体を汚している赤黒いオイルを指で拭う。現れた装甲はヒビが入り一部が剥がれ落ちていて、白い人工皮膚が剥き出しになっていた。元々戦闘用レプリロイドに似つかわしくない、愛玩人形に在るような整い過ぎた造形であったが、人形の様に動かない今その美しさが余計に引き立てられている気がして。

「ゼロ…」

思わずボクは、ゼロに口付けた。唇は、とても冷たかった。




あるレプリロイド





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