■ ある夏の日に
◎パートナーED後









「……暑い」
「…」

パタパタパタパタ。
先程からぼやきっぱなしのパートナーを、手に持った団扇で扇いでやる。

「…どう? ソル」
「……少し、涼しくなった」

そう言いつつも、未だソファにだらけている。今日は、時期にしては涼しい日だった。扇風機だけで十分凌げる暑さ。しかし、涼しめの気候であった異世界の生まれの彼には、この気温でも、溶ける程暑いらしい。
(ああほらまた溶けてる。)

「……」

暫くの思案の後、ふと思い出した。

「ソル」
「……なんだ…」
「かき氷でも食べる?」

確か、僕が小さい頃によく使っていたかき氷機があった筈だ。専用のシロップは無いけれど、それはジュースで代用すればいい。

「……かきごおり…?」
「ああ。氷を細かく砕いて、その上にシロップを掛けて食べるんだ」
「氷を…食べるのか…?」
「専用の機械を使ってね、砕くんだ。雪みたいに細かくなるよ」

試しに食べてみない?
そう言えばソルは(珍しく)素直にコクリと頷いた。













「…どう?」
「……美味い」

ソルは、シャクシャクと氷の山を崩す音と共に、とても意外そうに答えた。

「そう、良かった」

僕も自分のかき氷を一口掬って食べた。冷たくて、甘い。シロップをジュースで代用したからか、あのシロップ独特の舌に絡み付くような甘さではなく、比較的アッサリした甘さだった。あのシロップ独特の甘さも良いが、このアッサリした甘さも良い。そう言えばソルは甘い物が苦手だった。シロップをジュースで代用して正解だったかもしれない。

それから暫くの間、シャクシャクとかき氷を崩す音だけが、部屋に響いた。










2人共黙々とかき氷を食べ、気付けばお互いに結構な量を食べてしまっていた。
お陰である程度涼みはしたものの、体にダルさがのし掛かって。(あまり、冷たい物ばかり食べると、余計に夏バテしてしまうのだ。)今度は2人共にダウン……かと思いきや、ソルは逆に復活していた。(日が暮れ始め、気温が下がってきたからかもしれない。)

「トウヤ…大丈夫か?」
「ちょっと…大丈夫じゃない、かな…」
「病気か…!?」

ソルの慌てる様子が可笑しくて、ついつい笑ってしまった。

「ソルが慌てるなんて、珍しいな」
「…心配してるんだ!」

ソルはそう言って、膨れたようにそっぽを向いてしまった。
(…さっきまで、自分がバテてたのにね。)
でも、ソルに心配されるというのは何だかとても嬉しかった。





あるの日に





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