■ リセットは出来ません。
◎R12くらい
10年近く傍に居たけど、彼が泣いた姿なんて見た事無かった。泣くなんて思わなかった。
「っ……チェレン、の…ばか…やろ……」
ボロボロと溢れていく涙。頬を伝うそれは、人のソレより遥かに綺麗に見えて。リップ音を立てて、唇で拭った。しょっぱい。そんなの当たり前だけど、何故か驚いてしまった。涙が甘いとでも思ってたのか、僕。そう気付いてしまって、動揺して。ああ、調子が狂う。昔から、彼が絡むと僕は決まって可笑しな行動をとってしまう。今だって嫌がる彼に無理矢理仕出かしてしまった。
「何で、だよ…」
「……」
黙るしかない。僕は確かに、彼に対して不相応な感情を持っている。胸の内をさらけ出してしまえと僕が言う。もう片方で、幼馴染みのままで居たい、この居心地の良い関係を壊したくないと言う。どっちの方が良いのか。僕にはまだ、答えは出せていないから。
「黙って、ないで…何か言ってみろよ…」
「……ごめん」
今僕に言えるのは、謝罪の言葉だけ。
視線を落とせば、僕の手にべとりと付いた白濁。