さてさて。ハザード開始から約三日後。オレと委員長の仲はうっすい本のように突っ込みたくなるような早さで進展しました。マイナス方向に。いや、向こっかわは知らん。プラスってるかもわからん。…いや、多分向こうもマイナスだ氷点下だ。日に日にどころか時に時に視線が冷たくなってるわ、うん。いやいや、理由は分かってんだ。オレがなんにもしないからだって。ゾンビに襲われても反撃せずに逃げ隠れするだけだもんな。うんうん。そりゃ、精力的にゾンビ共をどこぞやの天使の如く撲殺しまくる委員長殿からしたらイラついてもしゃーねーよな。だがしかし、オレからしてみれば顔見知りゾンビに躊躇いなく手を掛けられる委員長の方が信じられないね。パチパチパチ。
「あー、焚き火があったけー」
「このクソ暑い日射しの中でか」
「うっせー現実逃避してんだよー」
薪はゾンビミンチである。パチパチとかいってない。ごうごう燃えてる。おそらくは油で。脂肪で。職員室で見つけたオイル切れかけライターがオレらの唯一の火種であるからしてか、委員長どのはゾンビ薪を次々投下して三日間この火を保ってらっしゃる。あ、ゾンビはこの三日の間に無事(?)緑のなんか腐ってそうな色に進化しました、やったね。うげぇ。どさどさどさ。委員長が台車を傾けて新たな燃料投下。知ってるか? アイツ、テニスコート用の巨大ブラシ(?)でチリ取りにゴミを掃き入れるかのよーに台車に乗っけてんだぜ? あーやだやだ。
「文句があるならお前がやるか?」
「滅相ナ。文句ナンテアリマセンヨー」
「…お前は生き延びたいのか、それともどうでもいいのか解らん奴だな」
「オレからしたら、わざわざオレの面倒見ちゃう委員長の方が解んないけどねー」
めちゃイヤそうだし、オレのこと。なのに、ゾンビに襲われた時はそこそこ守ってくださいましたし?食料とかもキチンと与えてくださいますし? え、なにこれ新手のツンデレ?んなわけねー。なにやら利用されてる感はひしひしと伝わってくるんだけれども。オレにどんな利用法を見出だしているのやら。謎である。はぁ…、と委員長が溜め息ひとつ。
「…俺がお前の面倒を見るのは、単にお前が生き残りだからだ」
おおう。顔に出ていたらしい。しかしそれに何の関係があるのか。
「よく考えてみろ。この異常事態の中で生き残りたければ戦うしかない。だが、相手はヒトの形、しかも見知った顔だ。そんなのに一人手を掛け続けていたら、精神に異常を来すぞ」
「あーっと…つまりオレは委員長の精神安定剤役なワケね」
兎はサビシイと死ぬと言うけれど、人間も寂しいと死ぬらしい。主に精神が。だが、まあ、しかし。
「委員長もよくやるねー」
顔しかしらない程に交流のない、しかもおそらく嫌いな人間だろうが利用してやろうという、その根性! いやー、オレだったら多分耐えらんないね。そんな紙精神なんざとっととポイッしちゃうね。ポイッ。



ああ、なんて面倒な性格だ!

(まあ、その根性のお陰でオレは生き延びているのですが。)
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