ミカミは、身を屈めてこそこそと教室を出ようとする金髪男に目を止める。…『田仲奏太』。たしか、そのような名前だった筈。常に騒がしいメンバーの中心で、ワンワンとより騒がしい男。何やら引っ掛かりを覚え、彼が教室を出たのを確認してから後を追う形でミカミもまた、教室を抜け出した。惜しむらくはその時間帯か。昼食を終えて最初の、最も睡魔が健全な学生達を襲う五限目。例に漏れず、殆どの生徒が船を漕ぎ、もしくは上体を伏せていた。二人の男子生徒が居なくなったことに、気付く者は居なかった。







ミカミは廊下の窓から外を見、そして驚愕した。人間が、人間を喰らっている。遠く離れているのに、ぺちゃぺちゃと汚ならしい咀嚼音が聞こえてくる気がする。ミカミの足は、縫い留められたかのように、動かない。どくりどくりと鼓動が早鐘を打つ。じとり、汗が滲む。おぞましい食事風景から、目を、逸らせない。びくり。ミカミと、濁った瞳がかち合った。

みてないで、ねえ、たすけてよ。

弾かれたように廊下を蹴る。途中、教室から教師の怒鳴り声が聞こえたが、構わず駆けた。出来るだけ遠く、遠く。敷地の端、特別棟まで。




はじまった悪夢
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