(SQ5月号ネタバレ注意▼)
あのな柔兄。
俺、柔兄に隠しとる事があるんや。
――俺な、柔兄が蝮ん事好きなん知っとった。
柔兄がずっと前から、蝮の事しか見てへんの知っとった。
蝮の事を何が何でも守る、て心ん中で固く決意した曲がらん意志があったんも、蝮が違う男の事を見とった時に 辛いの顔に出さんと一番近くで応援しとった柔兄が後々一人で泣いてたんも、全部知っとった。
知っとったのに、やのに俺はそんな柔兄を好きになってもうて。
自分にめっちゃ厳しいのに他人にはめっちゃ優しくて、俺の事一番に考えてくれる柔兄を好きになった。
俺は全部知っとったのに。
柔兄が蝮を好きな事、知っとったのに。
やのに俺は、自分の都合で柔兄にすがって弟の俺に手を出させた――いわゆる取り返しのつかん事をさせてもうた。
柔兄は俺の事いっぱい応援してくれとったのに、俺は柔兄の事応援できんかってん。
それどころか、蝮の事好きなんやろとも聞かれへんかった。柔兄の口から事実聞くんが怖かった。認めたくなかった。
もしかしたら柔兄は、そんな風に考えてた俺の気持ち気付いてはるかも知らんけど。
…柔兄、堪忍な。
他人の幸せに心から喜ばれへん最低な弟で、ごめん。
誰よりも一番近くにおったのに、大好きな柔兄の背中も押されへん最低な弟でごめん。
――…けどな、俺も男や。
ちゃんと自分に踏ん切りつけて、柔兄の幸せに対してちゃんと笑うえ。
柔兄、俺は、
そんな最低な弟やけど、
誰よりも何よりも
柔兄の事が大好きで、
誰よりも何よりも
柔兄の幸せを願ってんで。
やから、
「――…柔兄、結婚おめでとぉ」
もし今俺が上手く笑えてへんかったら、俺の事笑ったってな。
君想い
(無理矢理つくった笑顔に、涙が頬をつたっていった、)
20120406 黒豆
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