なぁなぁそこの君、俺の今の悩みちょっと聞いてえな。

実はこの頃、坊が全然構ってくれへんねん。俺としては、やっぱり恋人同士やからもっとベタベタイチャイチャされても問題無いし
むしろそうしたいんやけど、どうにも坊はシャイで照れ屋さんなんや。
せやから毎回毎回俺から甘えてるんやけど、めんどくさいんかもうそれにさえ応えてくれまへんのや。

正直な話、毎日悲しゅうて泣きそうで。
坊が俺を必要としてくれるような、俺から離れられへんくなるような、そんな良い案あらしまへんか?


「坊ー」
「……。」
「ぼーん、坊」
「………。」
「坊、坊ぼぉんぼーんぶぉん」
「あーもう、やかましわ!!なんやねん!!」

くわっ。ただでさえつりあがっとる目を更につりあげて、坊の名前を呼び続ける俺へと怒りの矢を向ける。
なんでそない怒りはるんですか。というより、

「なんで無視しはるんです」
「何がや」
「俺がいくら呼んでも、いっつも無視しはりますやん。なんでですのん」
「用も無いのに呼ぶからやろ」
「…用無かったら坊の事呼んだらアカンのです?」
「いや、そういうワケやないけど、そんなんにいちいち反応してられへんやろ」


なあ、聞いた?
そんなん、やて。坊からしたら、俺なんてどうでもええんやて。俺がいくら坊とイチャイチャしたい思うてても、坊からしたら目敏いだけやって。
ああ、なんか視界悪なってきた。なんか、坊の顔滲んどるし、あれ、おかしいな、目ぇから、

「な、志摩、なんで泣いて、」
「へ…?」

なんやろ、この胸の中でモヤモヤするもん。ついでにチリチリ痛んどって、涙止まれへん。

心配するように、焦りが混じった声で俺の涙を指ですくう坊に、いろんな気持ちが混ざってどうしたらええか解らんくなった。


「……無視しとった事で泣いとんやろ、…悪かった。やから泣くな」


まるで今までの俺の悩みを吹き飛ばすように、
坊は優しく、それこそ大切に、



「坊…っ、俺、坊に嫌われた思て…っ、ふぇ、」
「嫌うワケないやろ、阿呆らし心配すな。
変な態度とってもうた事は謝る。ホンマにすまんかった。
……許してくれるか?」


あやすように俺の髪を撫でる坊に小さく頷くと、触れるだけのキスが落とされた。




悩んでたんよ。


(それは小さな悩み事やったけど、)



20111110 黒豆

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