「坊、お団子もろてきましたえ〜!」

棒に串刺しにされた4つ繋ぎの団子が山積みにされた皿を、志摩が気を付けて持ちながら駆け寄ってくる。有難う、と一言返すと志摩はにへら、と頬を緩め、皿を挟んで俺の隣へと座った。
つい先日まで驚くほど暑い日が続いていたというのに、今日は急激に温度が下がり、涼しい一日であった。頬にあたる風がひやりと冷たく、気持ちが良い。リリリ、と足元で秋の虫が合唱をするように鳴きながら、静かで穏やかに夜が更けていく。電灯の灯などが見当たらない此処、京都の山奥では月の光だけが地を照らしていた。

「今年も雲一つ無い空ですね」
「せやな。お月さんがよう輝いとる」
「ホンマ、まんまるさんや」

もぐもぐ、と志摩は団子を頬張りながら言葉を発す。それに食うか話すかどっちかにせえよと一言告げて、目線をまた空へと戻す。――本当に、綺麗な空だ。月には流石に敵わないが、星達も美しく輝いている。なんの雑音もなく、ただ虫の声やススキの擦れる音だけが世界を満たしていく。ぼうっと月だけを見ていると、まるで時間が止まっているかのような、そんな錯覚に陥っていく。
――けれど、それも悪くない。
俺はこの実家から見る月が、空が、柄でも無いが大好きなのだ。特に七夕の日や、今日のような十五夜の日が。

「…坊、お月さん見るんもええですけど、折角女将さんらがお団子つくってくれはったんやから食べてくださいね」
「おん」
「……。ほら、俺全部食べてまいますよ?」
「おん」
「…………。坊、」

吸い込まれるようにじっと、ただじっと丸い丸い月を見ていると、志摩の言葉も右から左に通り過ぎていってて。気付けば空返事をしていたようで、それに不機嫌になったのか少し威勢良く志摩が俺を呼んだ。びく、と意識が返ってきて、なん、と志摩の方を見ようと顔を動かしたその時。

ちゅ。

目の前にはあろう事か志摩の顔が至近距離にあって、ふに、とあたる柔らかい唇。それを理解するのに何秒もかからなかった。

「…っ、志摩、お前、」
「食べてまいますよ、って俺言うたんやからね」

月ばっかり見てる坊が悪いんや、と頬を膨らました志摩が呟いた。


団子よりも、月




(それでもやっぱり、そんな君が一番好きだから)
(月よりも、君。)



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餡子様、リクエストありがとうございました〜*´`*!
勝志摩で甘のお月見という事で書かせていただきました…!いやぁ、これ勝志摩じゃないじゃないか。勝志摩前提の志摩勝じゃないか。うわぁもうホントすいませんぁああああああ!!!!!!←
あれでしたら書き直します書き直させていただきますのでどうぞお申し出ください…!
結論ふてくされる志摩君が可愛くてこの後いちゃいちゃする設定だったんですが長くなりすぎたのでカットしました…結果、しますぐ…いやもうほんとry
とととととりあえず、リクエストありがとうございました…!応援&温かい言葉までありがとうございました…!


20110923 黒豆

※お持ち帰りは餡子様のみ可能です。

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