ぎゅ、と温かくて力強い腕がしっかりと俺を抱きしめる。
離さない、と言わんばかりのその腕のぬくもりは、とてつもなく気持ち良くて、どうしようもなくて、

「坊、どないしはったんです、急に」

坊の大きくてあたたかい掌が、俺の後頭部にあって、ゆっくりと上下する。左肩の上にある坊の顔は見えないけれど、その行為から何かを示しているのが伝わってきた。坊は、いつもはこんな事しない。むしろ自分から誘わないといけない位なのに、急に、こんな、今まで俺が求め続けていたような事をされると、いろんな意味で胸が痛くなる。

「……坊?」
どないしはったんです、と問いかけてみても返事は無くて、ただ坊の腕の力がきゅ、と増すだけで。

…それが意味する理由くらい、本当は聞かなくたって解ってる。坊とはうまれた頃からの付き合いだ。だいたいの見当はついている。…でも、これは坊が言ってくれるまで決して触れてはいけない。――俺から聞いては、いけない事。

「…志、摩…
俺、な、ホンマ…情けないわ…。」

黙って坊の口が開くのを、俺も坊の背中に手を回して待っているとぽつり、ぽつりと坊が言葉を繋いだ。

「大口叩いとるだけで、なんもできんと…しまいには…皆離れていってまう…また、これじゃ和尚の二の舞や…」
「…はい」
「なぁ志摩…俺は…、俺はどないしたらええやろか」

蚊がなくような、今にも消え入りそうな声で坊は俺に訴えた。そんな坊の言葉を聞いて、俺の顔はふわ、と緩んだ。答えはたった、一つしかない。
今にも崩れそうな、泣きそうなその声に、俺は、






答えを教えて


(俺が繋いだ言葉に、坊は小刻みに肩を揺らした)


20110824 黒豆
いつもは左の勝呂くんなのに、お話書くと右になってしまうのは何故でしょうか

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