「和尚様」


彼がこの名前で俺を呼ぶようになってもう二年が過ぎた。初め、その呼び方に馴れなかった俺と彼――こと、志摩は前の、産まれてからずっとそう呼んできた呼び名で俺を呼んでしまったり、俺も呼ばれてしまったり。でも二年という歳月はそれをもなくしてしまって、今では"和尚"に何の違和感もなくなっている。

「…志摩か、なした」

そして俺は上一級祓魔師に、あの怠け者で女に目がない志摩は上二級とまでに駆け上がった。へらへらと遊ぶような志摩の性格は歳をとるごとに少しずつ変わっていき、無くなったとまではいかないが冷静で自意識の高いしっかりした人間になった。ピンクだった髪こそ変わってはいないが少し色が落ち着き、伸びた髪は金造のようになっていた。だが、志摩は非常に兄の柔造に似たかもしれない。
そんな俺も和尚になって何か変わったのかと言われればそんな事は無く、唯一髪型を全て黒に戻し、少し切った、そのくらいだ。

それにしても、志摩は正装が良く似合っている。しゃんとしている時の引き締まった顔が、余計彼の何かを引き立たす。

「…いや、なんとなく呼んでみただけです」

わざわざ俺の前に現れた志摩がそう言ったので、なんやそれ、と苦笑いをして返すと、彼は少し黙ってから「和尚、やっぱり変わらはれましたね」と頬を緩めた。

「…変わった?俺がか?」
「はい」
「どこがや?」
「…和尚、昔に比べてよう笑うようにならはれました。なんやつい心許してまうような、そんな」

優しい人になられましたよ、と。
それを聞いて少しの間、硬直。それから同じように変わった彼にせやろか、と笑って答えた。



変化したのは


(志摩やって、優しい雰囲気の人になったえ)


20110910 黒豆

[ 3/3 ]

[*prev] [next#]



- ナノ -