好きな奴って、誰?
なんか俺、変なことでも言うたか?
遡ること、約二分程度前の話。白石が俺に好きな奴とかおるん?って聞いてくるもんやから、おらん。って返事を返した。白石がつまらなさそうに表情を変えるから、仕返しとばかりに聞いた。
「白石の好きな奴って、誰なん?」
「はぁ?」
「いやいや、はぁ?やのうて」
「はぁ…」
「訳分からんわ、いきなり何でため息つくん」
「もう、えぇわ」
いや全くもって、意味不明やん?美形の白石が彼女作るのは楽勝なのに、今だ聞いたことも噂も聞いたことあらへん。やから、意中の奴はおると思うて聞いたんに、なんでため息つかれなきゃアカンねん!
「あ、もしかして俺が知らんだけで、彼女とかおるんか?!」
「…謙也、ちぃと黙りぃや」
「だって気になるやんか!」
なんやねん。
まともな返答もあらへん、ため息、もしくは黙れか。なんや酷ない?
元を辿れば、白石、お前が答えればえぇだけやっちゅーねん!
「しらいしー」
「予想とかついとるん?」
「学年で人気のある吉田とか?」
「ちゃうわ」
「じゃあ、性格の人気のある隣のクラスの田中なん?」
「それもちゃう」
「ヒント」
「仕方ないやっちゃなぁ…俺に犬みたいに着いてくる奴」
「ん〜…佐藤?」
「ちゃう」
けっこうな大穴は言うたで?挙げた三人は、随分と男子から人気もあるし、運動神経や勉強や性格。どれをとっても花丸や、それなんにちゃうとか、他に白石の意中を突く奴って誰やねん。
「白石、教えてや」
「あんま言いたか無いんやけど」
「昔からの馴染みに隠すことなんか、あらへんやろ?」
「あー…せやかて」
「男に二言はないもんや」
「…どんな答えでも、驚かへん?」
「おう」
「俺の好きな奴は…」
「……」
なんや乙女やないけど、なんやろ…ドキドキするんやけど。ワクワクと間違えたかもしれへんけど、取り敢えず白石の好きな奴が聞けるとだけあって好奇の目を白石に向けてるはず。
「謙也」
「へー、って…はぁぁああ?!それ正気かっ!?」
「至って俺は正常や」
「俺は男やで?しかも白石に比べて頭よろしくない、テニスだってそうや、女の子と違うて可愛さも無いやで?」
先程まで頭を抱えながらため息をついていたのが嘘だったかのように、思いを告げたことにすっきりしたのか、微笑を浮かべながら俺の言葉を聞いていた。何なん、びっくりして心臓ばくばく言っとる。
白石が俺を、絶対無い、ありえへんやんか。
「それでも、謙也が好きで愛しくて、しゃあないんや」
「…アホやろ」
「気持ち悪いとか思わんの?」
そりゃ、もちろん男に告白されたんは当たり前にはじめましてや。
せやけど、否定する理由も肯定する理由も無い今、答えを出す訳にもいかへん。不思議な事は、気持ち悪いとか思わん事、自分自身が疑わしい。
「別に…でも、返事は…」
「いつでもえぇし、そのかわり」
「ん?」
「絶対に惚れさせたるから」
勝ったような、どや顔で言われてしもうて。
時が止まった気がした、それと同時にもうすでに白石に傾いてる気がしてならなかった。
はじめまして、恋
09年12月23日UP