君との距離

何となく、テニスコートを眺めてた。自分の番はまだだからなのと、視線の先の相手を頬杖をつきながら半ばぼうっとしながら、やけどな。
今、視線の先で試合をしているのは白石と財前。いつものおふざけ試合ではなくて、財前が次期部長と着々とした準備段階の中の一部。二年の中でのレギュラーは財前だけなのだから、当たり前っちゅー話でもある。
前に白石とオサムちゃんが話とったからほんまに、俺らの引退が近づいてんのと財前が次期部長なんだと部室の前で立ち聞きという最悪なオプション付きで、そこらへんから考えていた。
それまで引退というのは、気にしなかったというのに。

「…謙也?」
「……」
「おーい」
「…うわ!いい、いま終わったん?」
「ん、今さっきな」

びっくりや、何かしら考えてたら白石の顔ドアップやし。数秒間の間に綺麗な顔しとんな、とか汗かいとるとかくだらないこと考えてたら、自分の状況に赤面してしまった。

「顔真っ赤やで、熱でもあるんとちゃう?」
「無いから!気にせんでえぇ」
「なら、えぇんやけど」


人の良い白石は、こんなことにまで気を配って、偉いやっちゃ。そう思う内に何となくテニスコートに居る財前を見た、白石よりも汗をかいてるみたいでそれでいて、倍に疲れとるように見えた。
やっぱり四天宝寺の部長は強いんや、なんて他人事のように思った。財前が可哀相に見えたんで、よっしゃ優しい優しい先輩がタオルを持ってってやるで、出血大サービスや。
思いたったらスピードスターでタオルを片手に持って財前の元に駆け寄ろうとしたら、誰かに手首を捕まれた。その反動で後ろに倒れそうになったのを俺の手首を掴んだ奴に凭れかかる形になった。いったい、誰やねん。

「なぁ行く方向、逆とちゃう?」

まさかの白石やった。

「全然、財前に届けよ思ってん。手首離してや」
「嫌や」

なんや、白石はクラスメートやけどこんな子供みたいな面めずらしい。此処はいっちょからかってみる。

「白石ー、財前に嫉妬したん?」
「おん、そうやで」
「へー…って、ハァ?!ほんまか?」
「ほんまや」

いやいや、流石の浪速のスピードスターもびっくりやで。白石はあんまり冗談言うような奴やないけど、こらびっくりやわ。びっくり所やないっちゅー話でもあるんやけど。

「そのタオル、俺に掛けてくれへんの?」「……仕方あらへんな」


わざとらしくため息ついて、白石の肩に財前に渡そうとしていたタオルをかけてやった。そしたら、白石が幸せそうに綺麗に笑いながら言うもんやから、


「おおきに」
「…感謝しぃ」
「めっちゃ感謝しとるで?」

こそばゆい気持ちが心に蓄積した。
絶対に白石には言えへんけど。

また一つ縮まった



(あんたら、邪魔っすわ)
(あ、財前)
(はよ、くっつきゃえぇねん)
(は?)







多分、白石は半分は確信犯、半分は自然に。財前はそれを呆れながら、通りすぎたり、謙也を蹴ったり←
蔵→謙←光
というのが、大好きです((知るか

09年12月06日UP


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