マフィアパロ
引き金はあまりに重くの続編
ぽつりと点が一つしかないならば、点止まりだろう。
でも、たくさん点があるならばそれは点ではなく線となる。
近すぎず遠すぎず、そんな関係なのだ。その二つは。
***
息を切らして俺は逃げる。
深い闇のように真っ黒のスーツを着る奴らから。一人だけ虫の息だったが、ギリギリのところで死んでいなかった奴がいたらしくソイツが応援を呼んだらしい。
もう、今日はヘマをしないと光と約束したのに。また、馬鹿にされる。
そんなことを頭の端にちょこんと残したまま一か八か人気の無い路地裏へと入りこむ。心なしか薄暗く埃っぽいため眉間に皴を寄せるが、一時の我慢だと思い気持ちを抑える。
もしもの時を考え黒光りする銃を懐から取り出し銃弾が入っているか確認してから、壁に背をぴたりとつけ息を殺す。
「どこだ?!全力で探せ!!見つけ次第、躊躇せず引き金を引け!」
『はい!!』
バタバタと過ぎていく足音に冷や汗をかく。
どうか見つかってくれるなよ、と。
だんだんと遠くなり、何分経ったかなどは知らないが消えた足音に胸を撫で下ろした。だらりと壁に寄り掛かり緊張を解く。
怪我という大きな怪我は負ってないものも、今回は少々心臓に悪いものばかりだ。
「…任務完了、やな」
小さな声でそうぽつりと呟き、ゆっくりと瞼を下ろす。
「ほんま、謙也さんってありえへんわ」
何処からか湧いて出てきたのか検討もつかないが、瞼を下ろしている間に俺の後輩の光は真ん前にいた。
相変わらず、気配を殺すのが後輩のくせに俺よりも何倍も上手い。まぁ、この後輩よりも上はもちろん居るが。
そんなひょっこり現れた相手に先程気が緩んだ俺は、大きく驚いた。
「おわっ?!」
驚いた様子で光を見る俺を軽く無視した様子で、淡々と喋り始めた。
「…謙也さん、あっちにアイツ等を引き付けたのは俺なんすわ」
「…有難う」
どうりで、そんな簡単に俺が見つからないで、尚且つ一直線に何処かへ行ってくれたわけだ。
あの光が自分の手助けをしたのにも関わらず、礼を言わないと後々が面倒なので先に礼を言う。
「しゃーないっすわ」
勝ち誇ったような、それでいて少々見下したような態度も当初は腹立たしかったが、当然今は慣れてしまった。
本当は、先輩という立場を利用してどうにかしようと思ったのだが、やっとこさで叶ったのがさん呼びだけという悲しい事態。
これは、光の態度を見兼ねた白石が改善しろと鶴の一声に近いものを言ったからだ。
よくよく、考えてみれば自分の力では成し遂げていない。
「ほな、帰ろうや」
「謙也さん、ご褒美欲しいんやけど」
帰ろうとする俺の袖を引っ張る光に目を向ける。
「ご褒美…?」
キョトン、という擬音が今の俺の表情にぴったりだろう。
光の口から出るご褒美に嫌な予感が頭に過ぎるが、そうとも限らないと考え一瞬でその考えを頭の中から消し去る。
「善哉」
「は?」
「白玉善哉、一週間分でどうにかしたりますわ」
「…了解」
自分の考えたものより、何倍も可愛らしいものだった為、間を空けたものの相手の言う褒美とやらを了承した。
そういや、光は甘いもの好きだったっけと思い出す。
本当は、光の次の任務を代わりにやってこいとか、一週間の間なんでも言う事を聞くとか、嫌なものを連想していたものだから安堵の息をこぼす。
強いて言うならば、青汁が好きになってくれたならとも思うが、こればっかしは甘党の彼には、飲み物として受け付けないと物凄い形相で返された記憶がありありと残っている。
あんなにも美味しいのに、そう心の中で呟く。
「じゃ、帰ろうや」
「おん」
ずっと一緒にくだらない日常が続けばいいのに、なんて無理な事分かってるさ。
点と線―――――――――――
マフィアパロ話、三個目ですね。私の中では三つ繋がっているのですが…あはは。
マフィアパロ連載しようか悩み所です。
需要があれば、しようかな?
10年07月22日UP