指切り

だるい。
十八歳というのは、まだまだ青春真っ盛りではないか。
なのに、今の俺と言ったら。
雨が降っているため湿っぽい空気の中、傘をさして駅に向かっている。

俺がどうして、こうなったのかというと経緯はこれだ。


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久しぶりの休日。
今日の朝、雨音がぱしゃぱしゃとする中、健康的な時間に寝て起きた俺は気分爽快。
軽く伸びをしていると、オカンから声をかけられた。

「なぁ、蔵ノ介」

「なん?」

「姉ちゃんの息子、蔵から見たら甥っ子やな。その子を、駅に行って迎えに行ってほしいねん」

「なんでや、由香里が行けばええやん」

「休日を割いてもらうんわ悪いと思うねんけど…由香里、今日は風邪気味みたいやから」

そういう事か。
なら、仕方ない。
実際、姉の甥っ子とは、本当に赤ん坊の頃でしか会った事はないから少々楽しみなのは事実。

「ええよ、由香里に薬飲ませたん?」

「当たり前や」

「ほな、準備してくる」

家に居て、着替えて、歯磨きして、用意して、靴を履いて、傘を持って、鍵を持って、がちゃりと鍵を開けて、ドアノブに手をかけて、ドアを開けた。
外を見た。

素晴らしいくらいの雨、車が通ると水溜まりの水が飛ぶ。
やる気が、失せた。



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そんなこんなで、今に到る。


「仕方ない、か」

一人でぼそりと呟くと、駅に黙々と歩いて行った。

まさか、この時はこんなに面倒になるとは、一欠けらも思いもしなかったのは、言うまでもない。






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