愛しき君に紡ぐ

ある日のこと、俺らは平凡かつ騒がしく、いつもと何ら変わらない一日を過ごしていた。
三年生は今年最後の中学校生活とあり、二年生の頃よりかは活気が溢れ出した。
大阪四天宝寺中は、爽やかな三年生ではなく、笑いを中心とした三年生なのは言うまでもない。
そんな事はさておいて、受験だなんだと、やはりせわしない毎日を送る三年生。
その中に、俺らもきちんと入っていた。
俺らはというと、担任の先生から昼食中に、聞いた話の内容はごく普通のもの。男子テニス部部長…まぁ白石が顧問、オサムちゃんに呼び出された。
白石は俺も来いと頼むため優しい俺は、仕方なく着いていき職員室前の廊下で、二人の立ち話を耳にしながら部活の事を伝えるホワイトボードに落書きしていた。
もちろん経験上、白石に、五月蝿く言われる前に落書きを全て消した。


「終わったで、謙也」
「お疲れさん」
「話しとっただけやけどな」
「知っとる」


むしろ知らへんかったら俺の耳は一体全体どこにあんねん、っちゅー話やろ。
そう、頭の端で考えながら白石の行動を伺った。


「ちょっと付き合うてくれへん?」
「ええけど」


どこに行くん、と聞こうとした所手首を掴まれ足早にどこかへ歩き出した。
保健室?視聴覚室?音楽室?空き教室?はたまた屋上?
などと考えているうちに、一番最後の後者、屋上に着いた。
少し重っ苦しい扉を開ければ、まだ少し冷たい風が俺の痛んだ髪と白石の髪を揺らした。


「定番スポットやんな、屋上」
「ええやん、ここに来れんのも後僅かなんやし」


屋上に入ってしまえば、バタンと音を立てて扉を閉める。
屋上に来たという事は、昼休みと5時間目を此処にいて、いわゆる授業サボるのだ。
一年生の頃はよく屋上に行ってみたい等と、言っていたような気がする。憧れの屋上も、三年生になった今では三年の定番のサボりスポット。


「白石がサボりを自分からなんて珍しいやん」
「俺かて、たまに面倒だと思うねんで?」
「たまにやんけ、優等生っ面の白石くん」
「優等生っ面なんか俺」
「それ以外に無いで」


それを言うと俺は白石の方を見て、白石は俺の視線に気づいてこっちを見た。
視線がぶつかった俺らは、自然と笑みが零れて笑い出した。
笑っていると、閉まっていた屋上の扉が開いた。
焦ったように扉を見た、先生ならば大変な事になる。ならば、来なければ良いという問題に戻るのだけれど。


「何サボろうとしてはるんですか、先輩等」


屋上に来たのは口うるさい先生ではなく、天才と呼ばれるテニス部レギュラー、財前光。
これには二人とも驚いた、全く予想していなかった。


「何で光が、此処におんねん」
「謙也さんに用があったんすわ、クラス行ってもおらんから」
「へー」
「タイミングも良かったみたいやし?」
「せやな、腹立つくらいタイミングええわ」
「そないに簡単に渡すわけあらへんやんか」
「青二才が」

えー、はい。
財前と俺の日常的な会話から白石が首を突っ込んだら、よく分からないが目の前でバチバチと火花散っている。
渡さない?財前のことだから、ぜんざいのことだろうか。
さっぱり検討のつかない俺の図上には、クエスチョンマークが何個か浮かんでいるだろう。


「部長が落とせるわけあらへんわ」
「財前ならもっともっと、無理とちゃう?」
「ハ、阿保なこと言わんで下さい」


やっぱり分からない、とりあえず、ぜんざいじゃないらしい。
ぜんざいは落とすものじゃない。
とりあえず恋の話っぽい流れなのは、何となく理解した。
ちゅーことは、こいつら同じ女の子が好きになったんか!
だとしたら、大スクープ。学校内は勿論のこと町にでてもモテまくる白石と、二年のくせしてめちゃめちゃモテる財前。
この二人が好きな女の子って、きっとものごっつ可愛えんやろな。

「なーんや、そういう事やったん?二人して言わへんて、仲間外れな気分やん」
「「え?」」
「好きな女の子がおんなら言ってくれたってええやんか」
「「……」」


そう言うと、二人の表情がピッタリと同時にものの見事に固まった。
違うのだろうか。
どちらにせよ、少し寂しいのは本当。


「どっちも応援しとるからな!」
「お、おぅ。…おおきに?」
「どーも…」



鈍感な彼に一万回の愛の言葉を



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10/04/18


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