枯れ木に沈丁花

※謙也と十年後謙也がそれぞれの世界に帰った後の話。
大人蔵謙



例えば、この世界がずっとずっと続くならソレは幸福で、この世界がぷつりと消えてなくなるコトは不幸で、でも例えばそのぷつりと消えて失くなってしまうとしてもその横にキミがいてくれるのならば、不幸から不幸中の幸いに変わる。
だって、キミがいないコノ世界はつまらなくて意味がないのだから。
…ただし、コレは俺の考えなんやけど。本当に、キミがどう思っとる事を俺が手にとるように全て分かるわけでない。だから、少しでもキミを掴もうとする俺をどうか、笑わんといて。




「おかえり、謙也」
「ただいま」

ずいぶんと落ち着いた会話になったものだと、心の端で思う。
昔だったら、謙也は素っ気ないとむくれたりしていたのに少し寂しいけど、それは時が流れて大人になったという事の一つの現で。
何一つ変わらないことと言えば何だろうか。

「どうやった?そっち」
「蔵が子供やった」
「そらそうやわ」
「中学生の俺には蔵が中学生っぽく見えへんかったの」
「褒めてん?」
「さぁ?」

なんなんやろ、多分、謙也とおる空間に安堵を覚えるんかもしれへん。せやかて、謙也がおらへんかったら、そわそわしてまう程子供ではなくなった。おかしな日本語やけど、きちんと大人になった。言ってしまえば、年を重ねただけなのだけれど。

「蔵にキスしてやったわ、おもろい顔しとったで?」
「やる事も変わらへんのやな」

俺も十年前は、謙也にやられたのだ。よくよく考えると世界はワープしていて…等と考えているときりがないので此処で終わらせる。どちらにせよ、何処にいっても謙也は謙也。変わらない。

「じゃあ、蔵は俺に浮気やーって言わたんやろ?」
「せや」
「蔵も変わっとらへん」

自然と重なり合った視線、クスクスと笑う。
その笑いは、話題をきり出す為でもなく面白いことがあったからでもなく、ただ視線が絡み合いこそばゆさを感じて笑うだけのもの。それなのに、この空間に流れる暖かいものは俺には分からない。

「なんも、成長してへんのかな。俺等」
「してるんやない?それなりに」
「なんやねん、それなりて」
「それなりは、それなりや」

ずっと、中学生の頃に必死でテニスに全てを打ち込んで汗をかいて皆で笑いあって、涙を流して無理矢理笑いながら卒業した。そんな優しく楽しかった日々はもう、戻らないのに。懐かしむ、と似ているコノ感覚。
分かっているのに、と自分に納得させるといつの間にか俺は自嘲気味な笑みにへと変わっていた。

「謙也、」
「なん?」
「ずっと、一緒におろうな」
「当ったり前やん、今更っちゅー話や」

けらけらとあっけらかんとした表情でそんな事を言ってまう謙也にホッとした、子供のころは逆だったはずなのに。
たまに、謙也に申し訳なく思う。謙也は十二分に男前で顔立ちも目鼻立ちも良い、それを俺という錘でつなぎ止めていて…本当は、等と考えていることもある。前にこれを謙也に見抜かれ叱られたこともあった。
どちらも子供っぽさが抜けないらしい。

「ずっと、俺のもんやから」
「こっ恥ずかしい台詞、よぉ言えるもんやな」
「謙也限定やし」
「あほ」

そう、例え錘だとしてもつなぎ止めたい、独占欲と嫉妬の醜い塊だとしても。俺から見たら真っ白な謙也を離す気などさらさら在りはしない。

勿論、これからも、ずっと、変わらない愛の形で。
ふと目が合うとどちらからとでもなく、お互いに唇を合わせた。


永久に続くものと仮定して





―――――――――――
お、終わったぁあ!
へにょん様、愛サマ、長らくお待たせしました!
前作はあまりにも酷かったので大真面目に大人っぽい雰囲気が出るように頑張ってみました←
相も変わらず、駄文ですみません。愛は詰まってます!

10年02月10日UP


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