嫌いだなんて嘘
そう、嘘なんだよ。
きっと。
なんて、冒頭から私は頭が沸いてるかもしれない。夢見が悪過ぎた、幼なじみの彼が私に「嫌い」と、言った。ただ、それだけ。それ以上にもそれ以下にも酷いことを言われた訳じゃないし、された訳じゃない。勿論、現実でも。
幼なじみの彼は馬鹿みたいに明るくて、みんなの太陽。そう、みんなの。もう幼なじみという形だけで彼を引き止めることなんか出来なくなってしまった。だから、私から少し離れた。
「なぁ、昼休み空いてたりすんの?」
「あ、丸井か。うん、空いてるよ。でも何で私?」
「暇そーだから」
「あっそ」
ほら、私みたいな奴が丸井と喋ると痛いくらいに女子の視線が刺さる。いたいよ、いたい。私だって、丸井と自由に話たって良いじゃないか。あんたらは、丸井の彼女か何かなの、いや私も幼なじみってだけだけど。
昼休みになって私は食べ終わり空になったお弁当を包んでバックにしまい込んだ。そしたら、女子たちは私に渡すまいと丸井に群れた。丸井は良い奴だから、振り払ったりしないだろう。だから、昼休みの件は無し。けっきょく、なんだったんだろ。
「なぁ、どいてくんね?俺さ、用があんだけど」
嘘。用件のため、幼なじみだから、だからそう言っただけ、誤解しちゃダメだ、私。
「なんでぇ?もしかして…」
そう言うと私に視線を向けるものだから、つい視線をそらしてしまった。ああ、なんて弱いんだろう。か弱い乙女なんかじゃ、絶対無いけれど。
「そ、分かってんならさ、どけって」
なんて言ったら女子の中を赤い髪の毛の丸井が掻き分けて進んで、私と目が合うとにっこり微笑まれた。そしたら目の前まで来て手首を掴むといきなり私を引きずるように教室から出てった。
「ねぇ、丸井怒ってる?」
「…おう」
「なんで」
「お前が悪い」
「分からないって、それだけじゃ」
廊下をずんずん進んで行くもんだから、男女と先生なんかもこっちを向いて視線を注いだ。なんだか、さっきの言葉が嬉しいのか、丸井が私のせいで怒っているのが悲しいのか分からないけど、涙が溢れ出そう。
丸井は、ほぼ倉庫に近いような現状の空き教室に押し込まれるように入ると丸井を見た。
「お前が丸井って呼んだりするからだろぃ」
「それは、」
「女子なんか気にしねぇで良いじゃんか。幼なじみなんだから…」
「幼なじみだからじゃん。所詮、幼なじみ…って」
「ばかじゃねーの。所詮じゃねぇから……」
「でも、女子から見たらっ!」
「なら、」
真剣な表情に切り替わった丸井にどきりとした。意外な一面を見ると好きになりやすいだとか聞くけれど、多分こういうことだ。
今、心臓がバクバクいってる。
「幼なじみじゃなけりゃいいんだろぃ?」
「へ…?」
「お前が好き。小せぇ頃から」
本当に時が止まってしまったら、どんなにいいんだろ。
そう思った私は気づいた。ああ、私はとっくのとうに丸井が、
きみがすき
………
ブン太って見かけによらず男前だよねって所から始まった´`←
09年12月11日UP