月影朔羅は、京都の路地裏を歩いていた。

銀髪をなびかせて歩く彼女はとても美しく、はっきり言って良いカモである。


身なりの整った小柄で可愛らしい少女が一人で歩いているのだ。

様々な意味で襲って下さいと言わんばかりでないか。










京都って古き良き平和な…っていうイメージだったんだけどなぁ。

裏世界の気配がそこらじゅうでするって、どうなの?





むー、と顔には出さず(下らない)思考の波に沈んでいた。すると


ドンッ

「あいたたたあ!やべー、骨折れちゃったかもしんないよぉ!?」

「まじかよヤバくねェ!?」

「おい嬢ちゃんどうしてくれんのぉ!?」

「そんなに怖がらせんなよ!嬢ちゃんかわいーから特別に一万円で許してあげちゃうぜぇ!?」





典型的すぎる。

これはアレか、新手の観光サービスか?

ここまで典型的すぎたら笑うしかないじゃんよ。

…ふむ。ここは乗ってさしあげようじゃないか。



「一万で良いんですね?」

す、とピン札を差し出す朔羅。

男達はほんの少し意外だったようだが、すぐに調子に乗った。

「物わかりの良い嬢ちゃんだなァ!しかし一万円っつっても一人一万だぜぇ!?あと同じのを二枚出しな!」

…何故周りの男の分もなのだ。
しかし「有り金全部出せ」と言わないのは優しさか…いや、ただアホなだけだろう。

「分かりました、はい。」

言われた通りに追加する朔羅。

更に調子にのる男達。


「良い子だなぁ嬢ちゃん。良い子にはご褒美をあげなくちゃなあ!?」

「それもそうだ!お兄さん達がイイコトしてやるよ、こっち来な…」

下卑た笑みを浮かべ、少女の肩を掴もうとしていた男の手が次の瞬間、奇妙な方向にねじれた。

「…へ?」

その男は疑問のつぶやきをもらした後、一拍おいて絶叫した。

「何しやがった!?」

残り2人の男達を緊張が包む。



原因であろう朔羅は








見惚れる程の笑みを浮かべていた。








「だって皆さん、怪我してないじゃないですか。





それじゃ折角の治療費が使えないでしょう?





だから。」





何かが間違っている。



道徳的にとか、一般常識としてとか、
そんなことより真っ先に、根本から






狂っている。





「ひっ…」



彼女の異常性にふれ、必死に逃げ出そうとする男達の腕も同様に至極あっさりと、確実に粉砕した。

既に一万の治療費の怪我の範囲を大幅に越えているが、気にした風はない。



その後は逃げる彼らを黙って見送った。





そんな朔羅の背後でシャキン、と軽い音がした。








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