殺し名か…
語り部は思いをめぐらす。自分の鏡の向こう側は裏世界において圧倒的な殺人能力を誇る殺し名の中でも忌み嫌われる一賊の中の鬼子だという。

彼の言葉を借りればまさに"傑作"。

その対がぼくという至って善良な一般市民だというのだからまったく戯言だ。



「で、何故君がここにいるんだ、零崎?」


「かははっ。んな顔すんなよ。今回はあれだ。ほら…なんだっけ。そうだ欠陥製品、お前なんとかシステムってとこにいたんだろ?」


「ER3システム?」


さて、こいつにそんなことを言っただろうか?


「それがどうしたのさ、人間失格。君はそんなとこに興味はないと思っていたけど。」


「確かにな。別にその…まぁいーや。大事なのはそこじゃない。俺の妹がお前に会いたいんだとさ。」


「零崎の妹?妹なんていたのか。会った途端に襲いかかってきたりしないだろうね。」


「しねーよ。自慢の妹なんだからな、なんかしやがったらしょーちしねーぞ。なんてな。げ。なんか俺兄貴に似てきたような…まさかな!」


一人で喋って一人で青ざめて一人で立ち直っている。いつも通りのつかめないテンション。…でも、


「他人に執着するなんて君らしくないね。そんなに可愛いのかい?」


「可愛いさ!そしてアイツは俺の価値を良く分かってる!

あ、俺もう行くわ。そいつ琴織っつーんだけど、そのなんとかシステムでお前に会ったことがあるとか言ってたぜ?

じゃーな。」



相変わらず自分勝手だ。でもER3システム?
思い出したくないから思い出せないな、第一コトオリなんて聞いたこともない。

あんなとこで会った奴…あんまりろくでもない奴じゃないといいけど。


ろくでもない奴じゃない奴?そんな人間がどのくらいいるって言うんだろう。というかぼくにろくでもない奴なんて言われたくないかな。なんて、もちろん戯言だけどね。


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