草の薫りが鼻をかすめた。
新緑のように強く主張するでもなく薫る其れをほんのすこしだけ甘く感じるのは己の心境のせいだろうか。
「どうしたの?」
「んー?や、何もない、」
ライアはスナフキンの肩に頭を預け、空を見上げる。
ずいぶんと、遠くなった。
背中から伝わる温かさ。
「魚は釣れますかー?」
「いや…退屈かい?」
「いえいえ。」
あぁ、しずかだ。何が?こころが。二人は共にありながら孤独であり、孤独でありながら互いの存在に癒されていた。
そういう意味で二人の相性はとても良い。
「ね。」
「何だい?」
「お夕食はママのところで食べるのかな?」
「さぁ、でもきっとそうさせてもらうことになるだろうな。」
「そうか、そうか。」
満足そうに笑ったライアは手元の緑をぷちりと千切った。
それをふうわりと風にのせる。それと同時にスナフキンが釣糸を手繰り寄せる。
夕暮れにはまだ、遠く。
「それでは、スナフキン。」
「何だろう、ライアさん。」
「私のお城でティータイム、というのはいかがでしょう?」
ひょいと立ち上がったライアに続いて空っぽのバケツに釣り道具を放り込んだスナフキンが続く。
彼は優雅に一礼するとライアに手を差しのべた。
「喜んで。」