緊迫した雰囲気を彼はものともしなかった。
襟足の伸びたショートに華奢な体躯。欧米人ならば即少女と認識される所だが色彩が否定する。アジア系の顔立ち。加えて透明感のある肌とくれば。
「日本人…か?」
そしておそらく少年。年の頃はディーノより少し下。
リボーンは頭をフル回転させて目の前の人物に対するデータを組み立てていく。
上品なたたずまい、無害を体現する外見を、纏う空気でぶち壊す彼に頭の中で警鐘が鳴る。
「日本人か、と聞く。僕は確か純日本人な訳で、髪だって黒い。それでも疑問形ということは、ここが日本ではないということかな?」
容姿に見合った声で少年はつぶやき、自分に銃を向けている赤ん坊に目を合わせた。
「オメー、何モンだ?どこから入ってきやがった。」
「うん?あぁ、私有地だったの。ごめんなさい。知り合いに突き飛ばされたんだよ。それから僕は…零崎。零崎、傀識。零崎一賊の末っ子だ。」
敵マフィアの使いではないのか。敵意も感じられず、スパイならもう少し潜入の仕方があるだろう。
未知の相手に対してリボーンは戸惑い、銃は傀識に向けたまま。
「…おかしいな。」
「何がだ。」
「何故君は僕に銃を向けたままなの?」
至極自然な疑問だ、とでも言いたげに首を傾げる。
「自己紹介ぐれーで信用できる訳ねぇだろ。」
違う、そこじゃなくて、と傀識。
「何故"銃"を向けているのかってことだよ。様子を見るに君たちは一般人じゃない。特に君は裏世界と関わりがないなんてレベルじゃない。そして僕は零崎と名乗った。零崎に銃は効かない。それを知らない裏世界の人間はいない。その銃の威力が核兵器を越えるっていうなら話は変わってくるんだけど…もしかして、」
そこまで言って彼は少し青ざめた。
"君たち"とは騒ぎを聞きつけて集まってきたキャバッローネの黒服の男たちを含めた言葉であり。
裏世界と関わりのないレベルじゃない"君"とはリボーンのことだろう。
「あのさ、七愚人とかER3システムとか玖渚機関とか人類最強こと哀川潤とか…知ってる?知ってるよね馬鹿なこと聞いてごめ「知らねーな。」」
リボーンは警戒心ゆえに即答し、その後ろではディーノや黒服の男たちが互いに顔を見合わせてしきりに首をひねっていた。
それを見て傀識は肩を落とす。
「えー。あー…うん。そっか。ありがとー。」