「えっと…あぁ、裏世界の説明までだったよね?
裏世界には殺し名七名、それに対応する呪い名六名がいる。

殺し名七名は裏世界で圧倒的な殺人能力を誇る。序列があって一位から

"殺戮奇術集団、匂宮雑技団"。頼まれて殺す「殺し屋」

"闇口衆"。己が定めた主君の為に殺す「暗殺者」

"零崎一賊"。理由なく殺す「殺人鬼」

"薄野武隊"。正義の為に殺す「始末番」

"墓森司令塔"。みんなの為に殺す「虐殺師」

"天吹正規庁"。綺麗にする為に殺す「掃除人」

"石凪調査室"。生きているべきでない者、運命に背く者を殺す「死神」


基本的に強い順かな。あんまり完全には敵対しないから分からないけど。
七位の石凪は最下層にして特権階級だから弱いわけじゃないと思う。


プラスして呪い名六名、

時宮病院
罪口商会
感染血統奇野師団
拭森動物園
死吹製作所
咎凪党

が殺し名に対応してる。ライバル、いや天敵みたいなものかな。



「何つーか、ファンタジーだなぁ…で、お前は「傀識。」」


ディーノの台詞に言葉をはさんだ。

そんな傀識の表情は普段の読みにくいものではあったがその眼は何かを訴えるように微かに揺れていた。泣きそうにも見えるその様子にディーノは焦る。


「ぅえ、あ、お前の名前、だった、よな?」


「そう。零崎傀識。」


一呼吸おいて傀識は続ける。


「君達を困らせてるのも、面倒をかけてることも分かってる。でもごめん。今僕は結構精神的にキてるんだ。…できたら、名前で呼んで。」


そうすることで自分の存在を証明してほしい、とそんな叫びが聞こえた気がした。


「傀識、アンタいくつだ。」


「11、2才、くらい。」

それを聞いてロマーリオは傀識の頭を撫でた。


「見た目はともかく雰囲気やらでもうちょい上かと思ってたけどまだガキじゃねーか。…何でこっちにきたのか…いや来させられたのか、理由は分かんねぇのか?」


切羽詰まった雰囲気を和らげて傀識は答える。


「何も聞かせられてない。ただ、…予測はできる。予想は、ついてるよ。」


話せ、と無言でリボーンが促す。


「先日、"零崎"は全滅した。昨日のことだと思ってたけれど、医者の話だと僕は数日放心してたみたいだね。」


ディーノとロマーリオは悲痛な表情を浮かべ、リボーンの表情は伺えない。


「そもそも、さっき話した殺し名の中でも零崎は群を抜いて嫌われてた。一賊といっても本来血のつながりはないんだ。


零崎の血は後天的に目覚めるもので。

覚醒した零崎は何の理由もなく人を殺す。


しいて理由をあげるなら"すれ違ったから"または"すれ違わなかったから"そんな感じ。

零崎に殺すか殺さないかなんて選択はない。零崎にとって殺人は呼吸に等しいんだ。全くの無意識で行われるもの。

むしろ殺さないようにすることが至難の技なんだ。」


「嫌われて当然だな。」


傀識は苦笑する。


「目覚めたばかりは特に自制なんてものがないらしくてね。


そしたらどうなるか、分かるでしょ?



近い者から…例えば家族や友人から、殺してしまう。」


「うそだろ…」


「罪悪感もない。だって呼吸することにいちいち罪悪感なんて感じてられないからね。…それでも一人は寂しかった。だから同類が集った。それが零崎一賊。


周りから見たら自業自得かもしれないけど、孤独を知っている分零崎の結束は堅い。


だからこその殺人鬼集団だよ。家族のためなら何でもする。"零崎に敵対する者は皆殺し"。これが絶対のルール。


どの例をだせば理解が早いかな…


例えば敵対する計画を立てているやつがいるかもしれない。そんなとき君達ならどうする?マフィアとしての反応は?」


「確たる証拠がでるまで厳重警戒、だろうな。」


「そう。零崎ならそうはいかない。そんな噂がたった時点でアウト、皆殺し決定だ。」


「しかしな、そんな見境なくやってたら敵が増えちまわねぇか。」


「零崎の皆殺しをなめちゃいけない。要は敵の関係者はみんな殺せば良いんだ。死人に復讐なんかできないからね。復讐の連鎖なんてまるごと潰してしまえば良い。例えば計画をたてようとしているマンション。そこの住人、いや犬や金魚なんかのペットも含めて皆殺し、だ。」



「なっ…それは何の関係もない奴がいたとしても、か?」


「いることを前提として、だよ。これは見せしめも兼ねてるらしいから。零崎に手を出せばこうなるぞ。ってね。…お兄さん、無理に理解しなくて良い。納得も同意もいらない。どこかの世界ではそういうこともある、と思ってくれれば良い。」


うつむくディーノ。それを無視してリボーンが声を出す。


「でも全滅した。っつーのはなんでだ?」


「実験、試運転、かな。…何か危ない思想を持った人がいてさ、強い人間を作ったらしいんだ。人間、なんて枠で収まるのか知らないけど。それがちゃんと使えるかの、実験。


零崎の絆の強さは分かったでしょ?


実験って言っても相手がせめてプロのプレイヤーじゃなきゃ文字通り相手にならない。
かといって普通強い奴ほど適わない相手に挑んだりしない。
でも零崎は違った。家族の仇はとるものだ。相手の強さなんて関係ない。

敵さん、楽だったろーね。一人殺せばあとは勝手に来てくれるんだから。」



嘲笑を含ませながらも、泣きそうな声で言い切って、

傀識はきゅ、と唇を噛んだ。





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