零崎傀識。そう名乗った少年はしばらく肩を落としていた。


当初感じられた異様な雰囲気は霧消し、まるで捨て犬のようなその様子に思わずディーノが声をかけようとすると彼は顔を上げた。


再び人外めいた空気を纏って。



「それで？」


どうやら彼の中で整理がついてしまったらしい。いきなりの発言にリボーンもついていけない。


「何がだ。まだお前について何も分かってねェ。」


「僕の考察によると今僕が何を言っても君達は信じられないよ。かといって君に嘘が通じるとも思えないし。だから。君達はこういう"不審者"が出たときはどう対応するの？殺す？しばらく監禁？僕的にはそこらへんに放り出してくれると有難い。」



「そこらへんって。お前行くところあるのか？」


初めて口を出したディーノに傀識は目をやり。行くところがないんなら…と続ける彼に言葉を紡ぐ。


「もしかして貴方はこのすごい屋敷のお坊ちゃんか何か？どうやら困っている人間を放っておけない人種のようだけど、組織のトップにいる者がそう簡単に不審者を引き入れちゃダメだと思うよ？守りたいものがあるんだろう。いや、守らなければならないものか。」



「どうしてそう思う？」


リボーンの問いに傀識はきちんと答える。この状況でそうすることが最善だと判断しているのだろう。



「うん？あぁ…図星だったりした？"見透かしたようなことを言うのは警戒を招くぞ。"とよく言われたのに、ねー…。別に君達の内情なんか知らないけどさ。金髪さんの眼が似てたんだよ。家族想いの素敵なお兄さんに、さ。」



「そいつはどこにいる？」


少年のデータを出来る限り集めようとリボーンが切り返す。



「新しい妹を守って死んだ、と噂に聞いているよ。まったく…そんな死因が皆に本望だったろうと言われるような、あ、関係のない話だったね。それで、うわ、ちょ、ごめ…」


突然崩れ落ちるように傀識は倒れる。


警戒してためらう部下と冷静に事態を見極めようとする家庭教師。


部下の制止がかかる前にディーノが駆け寄った。


「おい、大丈夫か!?」


傀識の目は固く閉じられたまま。



周りを見回すディーノと厳しいリボーンの目が、合った。



「オメーがボスだ、自分で判断しろ。ただし家庭教師として言っておく。"家族を亡くした"で同情したとか共感したとかはヤメロ。そいつの言った通り大切なモンを見失うな。｣



「キャバッローネは住民に優しいんだろ。そのボスが目の前で倒れた子どもを放っておけるかよ。」



その回答にリボーンは帽子を下げ一瞬薄く笑む。それから真面目な声音で、



「好きにしやがれ。それと、"一流のヒットマン"として付け足すゾ。そいつ、只者じゃねー。｣



「マジかよ…ちっ。おいロマーリオ！こいつ医務室に運んでくれ！」



部下達も緊張をほぐしいつもの活気が戻る。

ボスはガキも持てねーのかよ、などと軽口が飛び交い、平和な風景だ。





「ゼロザキケシキ…よくわからねー奴だが楽しくなりそうだな。」


不敵に笑う赤ん坊が一人、いたとかいなかったとか。