「組頭。」
「うん?」
「侵入者を二名確認。」
「そ。テキトーに対処しといて。」
「適当ってアンタ…」
しっしっ、と報告に来た部下を追い払う。
"確認"されるようなレベルならばそれこそ適当に偽の情報でも掴ませておけば良いのだ。優先すべきは。
「ヤーな感じだね、全く…。」
ガラ、と戸を開く。見上げれば何とも形容し難い形の雲が流れていた。月光はまだ、遮られて。
「組頭、何か?」
「散歩。」
植え込みの影から顔を出した部下をかわす。不満そうにしているがそんなの知ったことではない。
音を立てずに塀を越えた。向かうは裏手の森。
ただ己の勘にのみ従って、木立を駆け抜ける。
「見つけた。」
ふっと手頃な枝に飛び乗り身を隠す。少し体をずらして覗き見た。
ドサリ、と音がする。
少し開けた場所、こちらから見て手前に一人、数間奥に一人。忍装束の男が倒れている。
遅かったか…?
静かに、何の前触れもなく、ソレは現れた。手前に倒れ倒れていた男の傍らにしゃがみ込み何やら探っている。そのまま影が立ち上がり―――