「空が青いなぁ…」
思わず現実逃避を試みた善法寺伊作が振り仰いだ空は確かに美しく、日頃よりも高く…何より、綺麗な円形に切り取られている。
「もう…今日で何回目だろ。怪我なし、備品も…多分大丈夫。そしたら後は…」
地上に戻るだけか。
忍術学園が誇る保健委員長はお約束通りに今日も落ちていた。
「綾部くんに見つかるのが一番応えるんだよね精神的に。」
「伊作ー?…いさっくーん。」
「仙蔵でも嫌み言われるかなぁ…留さんにはさっき引き上げてもらったばっかだし…」
「いい加減現実に戻ってこいや。」
「わぁっ!?」
見上げた先には。
逆光でよく見えない。シルエットは立花仙蔵…大きさが違う。
「何か失礼なこと考えやがったろ。」
「、え!?いや、そんなことないよ!」
慌てて否定すれば、小さく声がする。
「葵さーんっ。」「持ってきましたっ!」
「おぅ庄、彦。ありがとな。伊作、縄下ろすぞ。」
「あ、うん。ありがとー。」
「上ったら一応保健室だかんな。」
「全く…保健室ってのは怪我人を保健委員が手当てする所だったよなぁ?ん?」
「はは…」
葵が呆れ、伊作が苦笑するのも頷ける。今手当てを受けているのは伊作に左近、伏木蔵と乱太郎…つまりは保健委員会の面々なのだ。
「後は数馬が揃えば保健壊滅だなぁ。」
「葵ー。そんなこと言うと"コンコン"…ねぇ。」
伊作の言葉を遮って扉が叩かれる。
「すみません。開けてもらっても良いですか…?」
「今行くよー…ったく、やーな予感しかしねぇ。」
浦風藤内の言葉に葵が立ち上がる。
今までの流れに加えて三年は組とくれば…
「矢崎先輩っ!?すみませんあの、手が離せなくて…数馬が穴に落ちちゃってですね…っ…?」
保健室のなんとも言えない空気に戸惑えば。
葵が思わず吹き出して迎え入れてくれた。
「お疲れ様、藤内。保健委員会コンプリートだぜー?委員長サマ。」
「笑いごとじゃないってば…」
「?」
「あー数馬は悪くないから。」
ここまでくると笑うしかないんじゃないだろうか。