「疲れた」

「悪いな、ほら、茶だ。」

「ありがとー。」


葵を労う仙蔵。しかし茶を淹れたのは伊作である。


「ねぇ、本当にこれで良いの?」

「んー…多分?」

「なんだ伊作。私の策に疑問があるのか?…あぁ、来たようだ。」


がらり、と扉を開けた綾部はツカツカと葵に近づく。

おろおろしながら見守る伊作と不敵な笑みを浮かべる仙蔵を完璧スルーである。


「おやまぁ。アヤ、どうした?」


綾部の口癖を借りて面白そうに笑う葵。

対する綾部は唇を引き結んで仁王立ちである。


「どうして、保健委員会の味方をするの。」

「味方っつーかなぁ…あんまり彼らが落ちるもので。ちょっと不憫でね?」

「放っておけば良い。」

「んなこと言ってもなぁ。他の奴らだって落ちたろ?獲物は充分じゃないか?」

「葵が来てくれなくなった。」


なかなか話の脈絡がつかみにくい少年である。


「まぁ、付きっきりだったからねぇ…」

「私に穴を掘るなと言うの。」

「そうは言わないが。ちょっと抑えた方が良いかもなぁ。下級生もたくさんいるんだ。アヤの罠は素晴らしいからな、彼らにはまだ早い。」

「抑えたら、葵は私のところに来てくれる?」

「いつだって行こうと思ってるよ?」


綾部は葵にぎゅう、と抱きついて小さな声で言った。


「少しだけ、我慢する。保健委員なんかとずっと一緒にいるのは許さないから。」

「ん。偉いなアヤ。」


葵から離れ、他の二人に向き直る。


「ご迷惑を、おかけしました。立花先輩。」

「構わんよ。」

「あれー?なんで僕睨まれてるんだろう…」

「伊作がんばー。」


後日、学園内の落とし穴は少し減ったそうな。但し保健委員会の通り道が重点的に狙われたのは思い違いではないそうである。

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