時が刻まれてゆく。無情にも数多の命を奪うべく、爆撃へのカウントダウンと共に。
どこだ、どこだ。
或る海賊は仲間のため、命を削った。
或る海兵は己の信念を貫く為、矜持を捨てた。
「そんな、」
王女は嘆いた。目の前の光景を受け入れたくない。必死の想いでたどり着いた砲弾。それを掴み舞い上がる忠臣。
「いやよ、ペル…!」
「ああ、こんな勝手は許されないよ、私の尊厳に関わる。」
力強い声、これは。
「ライア、さん…?」
周りを見回すも、幼少時代から何度も自分を助けてくれた彼女の姿は捉えられない。
その間にも気高い隼は空に溶け込んで…?
影が、見えた。
重低音が腹の底に響き、巨大な危険が去ったことを告げる。
しかしそれは一つの魂が失われた証でもあった。
新しく一歩を踏み出そう、ここがスタート地点だ。
国王の言葉に拳を振りかざす皆を見て胸が熱くなる。まだやり直していける。みんなで…みんな?失われた命を背負っていけるだろうか、私に?
「壊すのは容易い、戻すのは難しい…反乱の終わりは国の復興を意味しない。そう言ったよね、チャカ?」
「ライアさん!」
「世話になった、無事だな?」
「ん、私はね。そこで、だよ。だから、こんな大変なときにいなくなるなんて、許されないでしょ?仮にも王家の守護神…」
言っている言葉の意味が分からない。
「ライアさん?」
「ちゃんと怒ったら良いよ。目が覚めたら。」
彼女がつい、と指差した先には海兵が二人、白装束の男を抱えて、…
「ぺ、ル…?」
駆け寄って抱きつき、涙が流れた。
血の気が失せた顔色は彼の容態を示している。しかしか細いながらもしっかりとした呼吸が、あった。
彼女がどんな細工を施したのかは定かでないが、そんなことはどうでも良い。
ただ、ただ、そこに命があるということが、嬉しかった。