「あーあぁ…戦争、だ。」



今アラバスタは暴動の波に覆われている。

血で血を洗う、現状。これを嘆く者も多いのだろう。



「やり方が、荒っぽいんだよ、クロ…」



それぞれが、それぞれの想いを抱き、衝突する。しかも目指すは国の平和とあらば。



「優しい姫様はいかばかり、お嘆きか。平和の為に血を流すなんて」



愚の骨頂、と言いたいところだが首謀者が友人とあっては笑えない。



「仕方ない、私もやれるだけのことをやろうか。」



只人よりも可能の範囲が広いことに、感謝はしない。

個人的な正義を全うすべく手に入れたのだ。こんなときに、使うために。

須く、公使するのみ。















あ、いた。

目的の人物を見つけ、傍に降り立つ。警戒されないように、気配は殺さず。



「スモーカーさん。」


「よお。…ライア、ここで何してる。いや、何をするつもりだ?」


「んー。海軍の邪魔はしないよ。アラバスタの英雄が本性現すらしいから、"救世主"が代わりをしてあげようかな、と。」


「お前の冗談きいてる暇ァねぇぞ。」


「えー、冗談じゃないんだけどなぁ。…じゃあ、優しいお姫様を助けにきた。あれ、使うの?」



ライアが指さしたのは人工降雨船。



「誰が使うか。俺は海兵だ、罪人になるつもりはねぇ。」


「そ。国王は、偉いねー。優しいからこそ、民の為に使いたかったろうに。」


「仁義をわきまえてんだろうよ。トップに立つ者は人の道を外れちゃならねぇからな。」


「あっはは、それ海軍のお偉いサンに言うと良いよ。…じゃあ、賞金のかかった外道が使うのはありかな。」



スモーカーは傍らの少女を振り返り、見つめた。

その顔が少し曇って見えるのが気のせいであることを、願う。



「妙に自虐的だな。お前らしくねぇぞ、ライア。」



悲しげな表情を見ていられなくて、彼女の頭に掌を乗せる。

その行為が先刻彼女に贈られたものだということなど知る由もなく。



「ちょっと…人の頭が良い位置にあるからって、」


「小っさいからなぁ。」


「放っといて下サイ。…じゃあほら、ダンスパウダーの量がちょっと位減っても気にしちゃだめだよ。」


「確認したやつが叱られるだけだ。」



あーじゃあ、その人には後で菓子折りでも持っていくよ、と言って去る少女が、なんだかいつもより頼りなく見えた。



「無理すんじゃねぇぞ…」



どうせ無茶はするんだろうが、と呟いて彼も仕事に戻る。

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