ようやく落ち着きを取り戻し、サンジの淹れた紅茶を飲むナミ。その向かいに座るライアを見ながら、ウソップもまた重要な疑問に気づいた。



「なんか流されてたけどよ…俺の名前はなんで知ってんだ?」



面識があるとは言っても知り合いにも満たない。

手配書には後頭部が載っているが名前など分かるはずもない。



「ん?あぁ…ルフィが言ってたでしょ?シャンクス達とは結構仲が良いの。」


「…!親父を知ってんのか!?」


「そ。わざわざ写真まで見せて息子自慢するんだから。ウソップも射撃うまいのかな?」


「お、おう!腕には自信があるぜ。」



憧れの父親に自慢されたことが嬉しいのだろうか、そわそわとしている。



「へぇ…」


「なんかさっきからライアの知り合いの幅広すぎない?ベルメールさんと仕事したってことは海軍側にいたってことでしょう?なんで赤髪と交流があるのよ。」



もっともなナミの言葉に苦笑する。



「あー…"お前の人脈は節操がない"ってよく言われる。」



そう言って笑顔でごまかせば、これ以上は突っ込まないでくれた。

海軍に関する情報はあまり吹聴するものではあるまい。

シャンクスやミホークは見て見ぬふりをしてくれる…というより全く関心がないようだからあえて隠したりはしないけれど。



「そっかぁ…"救世主"に俺の自慢…救世主ぅ!?」


「なによウソップびっくりしたじゃない。反応が遅すぎるわよ。」



突然あわあわとする彼に誰もついていけない。



「だってよ、救世主っつったらオメェ…昔っからの俺の憧れだぜ!?」


「ウソップくん、世間に流れてる噂なんて信用ならないものが殆どだよ。あまり、好きじゃないんだ。そう呼ばれるの。」



噂として何が広まろうと知ったことではないが、面と向かって理想を押し付けられてはかなわない。



「そ、そうか…悪ぃ。」


「またうまいこと年齢の話題をずらしたわね。」


「そう言わないでよ。不可抗力じゃない時の流れなんて。…やっぱり、気になる?」


「そりゃあね。年とっても若くいられる方法なんて良いお金になりそうじゃない!」



思わず吹き出しそうになった。下手な芸人ならずっこけているところだ。周囲でまさにそのリアクションをとった者たちには拍手でも贈るべきか。



「まぁそのうち分かるでしょう。あんたとは長い付き合いになりそうだわ。」


「おや、奇遇だね。私もそんな気がするよ。」



長い、付き合いになるだろう。

両者が時の荒波に飲み込まれない限り。

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