「ねぇ、何で私の名前知ってたのよ。」
サンジに入れてもらった紅茶を飲んでいると、ナミからの質問。まぁ当然の疑問だね。
「知ってた、うん、間違ってはいないんだけど…」
言葉を切り、向けた視線の先にあるのは。
「美味しそうなみかん、の色の女の子、だから。」
ライアはどこからか一枚の写真を取り出して見せる。
「なっ、これ…!」
「んナミさんの写真ー!小さいナミさんも素敵だー!」
めろりんめろりん、とくねくねしているサンジの言葉通り、写真に写っているのは小さなナミとノジコ、そしてベルメール。背景は勿論、この船にも一部が乗っているみかんの木。
「どうして…?」
「ベルがね、可愛い娘が二人もいるんだぞーって自慢してきたの。その時の、写真。それに最近、ゲンさんから"ナミときたら海賊なんぞになりおって!"って愚痴を聞かされたるし。海軍の上層部は"麦わらがアーロンを倒した"って大騒ぎするし。貴女を見た途端あ、って思ったよ。」
あ、ベルって言うのはベルメールのことね、と念押しして続ける。
「ごめんね?私の中ではベルやゲンさんから聞いた"小さいナミちゃん"のイメージだったものだから、ついナミちゃんなんて呼んでしまったの。」
「そ、う。どうしてベルメールさんを知って、るの、よ?」
一口紅茶を飲み、答える。
「ベルは海軍にいたでしょう?その時に会って、一緒に仕事したりね。さばさばした人で、すごく付き合いやすかった。」
今では全てが、過去形だ。私は謝るべきなのだろうか。ベルを、彼女を、助けなかったことを。ベルは手遅れだったとしても、彼女の忘れ形見や村の人間たちを救うべきだったのか…過ぎたことだ。今さら生存の可能性をちらつかせる方が残酷か。
"救世主"がこんな人間だと知ったら失望されるかもね。
「ナミ。」
名を呼べば、おずおずと顔をあげる。
「あんな素敵な母を持ったなんて、とても羨ましいよ。」
血のつながりがどれほどのものだと言うのか。ベルはナミにとって結果的に徹底的に、"母親"だったのだ。
ねぇ、そうでしょう?
「あったりまえよ!」
太陽みたいな笑顔。良い仲間のおかげ。彼らが出会えたという事実をもって、私の行動は正しかったとさせて頂こう。