わずか8才の賞金首として、私は暗い路地裏を走っていた。
また裏切られた
また裏切らなければならない
もう、いやだよ、お母さんっ…!
「あら、ら。小さなお嬢さん、どうしたの?そんな泣きそうな顔をして。」
女性、というよりは少女の声だった。
ふわりと自分の前に降り立った彼女を、幼いニコ・ロビンは呆然と見つめる
「誰…?あなたもわたしの命が欲しいの…?」
もう疲れきっていた。
母をなくしたばかりのロビンにとって、日々は過酷すぎた。
母と似た髪を持つこの人になら、殺されてもかまわないような。
「うーん…私、お金には困ってないなぁ。それに、」
またもふわりと静かに彼女は動き、ロビンの頬に手をのばす。
「友人の娘の、かわいい女の子をどうこうしようなんて気は、ないよ。」
「友人…?」
「そ。オルビアが、貴女をよろしく、って。」
警戒しなきゃいけない、でも、この人を信じたい。
ロビンの目に涙があふれる。
「私はライア・アルーフって言うの、よろしくね?」
今まで大変だったね、と言って抱きしめられる感覚が母を思いださせて、久しぶりに人前で声をあげて泣いた。