「…い。しっかりなさいってば、チャカ。」
「う…」
痛みを抑えて目を開ければ、あぁ良かった、と少女が笑っていた。
「お疲れ様。大変だったね。」
「なぜ、ここに…!こんなことをしている場合ではない、早く…ぐっ。」
「立つの禁止。せっかく手当てしたんだから大人しくしててよね。」
そう言われて自分の体を見てみれば、なるほど大きな傷には包帯が巻かれていた。
原型をとどめない石柱に背を預ける。ほど近いところに部下の姿があり、思わず顔をしかめる。
「早まったことを…」
「ん?…あ、ツメゲリ部隊、だっけ?まだ息があるよね。」
部下の首に手をあて、脈を確認している。そんなことをしても。
「無駄だ。…豪水を、飲んだ。」
「豪水?…あぁ。水ごときに負けらんないっての。」
そう言って彼女は目を閉じた。
「何を…」
「制約解除―Limit cancel―」
あざが、ひいていく。
「なんと…」
「4人はキツい…3日は、目覚めないと思うよ。」
「それしき…何と礼を言えば」
「どうかな。」
怪訝そうな視線に促され、彼女は語る。
「普通の人間なら、助からない。死ぬ覚悟だったんでしょう?それに横やり入れて摂理を無理やりねじ曲げたわけだから。ただね、この人達が国の為にどれだけ厳しい訓練してたか、私見てた。
そのおかげで、多分助けられる。助かってくれる。でもやっぱり、寿命は半分も残ってないはずだよ。」
構わない。ここで終わるはずの命をわずかでも、引き伸ばしてくれたのだから。
「彼らは、よく戦ってくれた…目覚めたときには区切りがついているといい。」
「そうだね。そのためにもう少しお手伝いしてくるよ。」
「まて、私っ…も。」
「無理だから。」
「しかし。」
「強情だね。立派だけど。良い?ここも安全とは言えないんだから。何かあったら彼らを守るのに力を使いなさいな。貴方も、ちゃんと休まないと。戦いが終わっても国が元通りになるわけではないんだから。」
「…了承した。礼を言う。」
思えば、王女が幼い頃から世話になってばかりだ。
彼女が去った方向に、武運を祈る。
祈りなど必要とはしないかもしれないが、どうか、あの不思議な彼女の道に幸あらんことを。