「ヒナ嬢。」
「あら、久しぶりじゃない。ヒナ感激。会いにきてくれたの?」
微笑む女海軍は美しい。
「うん。ヒナ嬢も忙しいのね?」
「まぁね。同僚のよしみだからって程があるわ。」
それでも付き合う彼女は人が良いのだろうか。
「ね、ヒナ嬢。」
「あらどうしたの?改まっちゃって。」
こんな姉がいたら素敵だろうな。
別に、迷ってるわけじゃないけど。少しだけ、ほんの少しだけ、弱音を吐いても良いだろうか。
「自分の正義が、大切な人を傷つけるとしたら。…どうすれば良いのかな。間違いにしか思えないことが、自分の使命だったら。みんなは、どうするのかな。」
「それは、ライアのこと?」
ヒナの問いかけに首をふる。
「そんなときあくまで理想論を実行するために、私は力を得た。全部守るなんてふざけたことを実現するために。でもみんながそうできるわけじゃない。力がなかったら、どうしようもなかったら。そうやって悲しんでる人に、私はどうしたら良いのかな。」
ヒナは笑う。巨大な力を持ち、罪人に足る非情さまでもその身に宿すことを成し遂げた少女は、やはり人間らしさを失ってはいなかった。
そのことに歓喜して、ヒナは笑う。
「大丈夫よ。私の知っているアナタは、そういう人を救っても余りあるだけの能力を持ってるわ。―――ただし。」
ライアが顔を上げれば、ヒナは優しく彼女を抱きしめた。
「全部一人で背負いこむことはないわ。悲しくなったら私でも誰でも、頼りなさい。アナタは抱えてる人脈のレベルも半端じゃないって聞いてるわよ。」
海兵として余り歓迎できない輩も含めて、と悪戯っぽく微笑む。
「うん。ありがとう!やっぱり大好き、ヒナ!」
この娘が笑顔でいてくれれば、世界は平和であるようにすら思えるわね。