「あーらら。」
「?ずいぶん冷淡じゃねぇか。知り合いだろう。」
ライアはへらりと笑って答える。
「ルフィの生命力は半端じゃないって聞いてるからねー。それに。痛そうだね、腕。」
「フン。なんの障害にもならねぇ。で、どうすんだ。この国を救うか、救世主?」
クロコダイルの皮肉に露骨な反応を見せるのは長い付き合いの証拠か。
「その呼び方キライ。…私ごときに国一つは背負いきれないよ。」
「お前ならやれそうだがな。」
「今ここでクロちゃんをぶっ飛ばせば良いだけなら出来るかもね。」
「そりゃあ勘弁だ。」
少しだけ迷ってから、ライアは意を決する。
「ね、クロちゃん。本当は、何がしたいの?相棒には、なってあげらんないけどさ。話くらい、聞かせてよ。まさか古代兵器を手に入れたら海軍脅して慌てふためく様でも見たいなぁ、なんてもんじゃないんでしょ?」
「は。それも楽しそうだなぁ。…世界にはどうにもなんねぇことがあるってことだ。」
「どうにかできることも、あるよ?」
「それでも、だ。この国の王女様を見ろ。あーすれば、こーすれば…できもしねぇ理想論かかげて、結果どうだ?全員死ぬ。ムカつくんだよああいう輩は。」
「何かを、思い出す?」
クロコダイルの眼光が鋭さを帯びる。
「それ以上言ってみろ、いくらお前でも許さねぇ。」
「言わないけどさ。私としては寂しいんだよ。あんまり大きいことするとクロちゃん、連れて行かれちゃうでしょう。」
ライアが目を伏せて言えば、クロコダイルは逡巡し…ドアへと歩きながら、彼女の頭に掌をのせ。
「心配すんな、理想郷の祝賀会にはお前も呼んでやるよ。」
そう言って不敵に笑んだ。
「次に会うのが鉄格子の向こう側でないことを祈ってるよ。」
「はっ。好きに言え。」
楽しそうに吐き捨てて、クロコダイルは部屋を出ていった。
「クロちゃんのあほー。」
誰もいなくなった部屋に佇み、ライアは呟く。
好きな道を突き進む者同士だ、何の文句も言えないけれど。決して、成功は願えないけど。
こうして悪態をつく位は、悪友の無事を祈るくらいは、許せ。
彼は、寂しい人だから。
「クザン?ん。…取り敢えず犠牲者の数は出来るだけ減らすようにしてみるよ。…うん。ロビンの動向も一応チェックしとく。…大丈夫。じゃ。」