「じゃあな。」
「ん。せっかくの兄弟の再会に水をさしてしまったかな?」
「問題ねェよ。」
去っていくエースを見送り、麦わらのクルーは些か失礼な感激に見舞われる。
いち早く我に返ったのはやはりナミ。
自分だけ面識がないらしい事実にイラつきながらもライアに向き直る。
「大体ねぇ、おかしいじゃない!?会ったこともないのに私の名前まで知ってるなんて!」
「落ち着いてよナミちゃん…あぁ間違えた。ナミさん。」
ライアの言い間違いは不審感を上乗せさせてしまったらしい。
「ごめんなさい。貴女の名前を知ってることについては後でゆっくり。まずは自己紹介をさせてもらうね。ライア・アルーフと言います。以後よろしく。」
あくまで自分のペースを守る彼女の様子を見て、とりあえず周りからうめていくことにする。
「まぁ良いわ。こちらの紹介は一切いらないみたいね。…で?あんたたちはお互いに彼女の知り合いだったことを知らなかったみたいだけど。」
航海士の尋問に船長があっけらかんと答える。
「おれはちっちぇえ頃に会ったんだ!ライアはシャンクスと同じくれえ強いんだぞ。」
ナミの視線に促され、順に答える。
「わ、私も小さな頃に、王族会議のときに会って…」
ライア・アルーフが王族だなんて噂は聞いたことがない。訝しげなナミの様子に、ビビが説明を加える。
「あの、警備をしてらしたんです。その後も何度かこの国に来てくれて…」
「お、おれもだ!ドクトリーヌの友達だって、時々ドラムに来て薬草の使い方とか教わったんだ!」
話自体はおかしくない。しかし…有り得ないだろう。
「ライア、あんた何歳?」
「歳?18…6、いや7?まぁその位。だと思うけど。」
現在18歳程度のルフィ達と"彼らが小さな頃"に出会った?
いや出会うだけなら問題ない。しかし当時に"赤髪と対等"で"王族会議の警備をしていた"?
「ナミさん、疑問に思うのは当然だけどさ、まぁ"グランドラインだから"ってことで納得しといてくれないかな?」
「…私たちに害を加えるつもりはないのね?」
「ない。」
断言。もとより賞金二億ベリーといえども通称"救世主"だ。仕方あるまい。
「分かったわ。信用はしてないけど納得はしといてあげる。」
「ありがと。」
にっこりと微笑んまれてはどうしようもない。
「っ、ナミで良いわ。何歳年上かわかんない人間にさん付けで呼ばれたくないもの。」
「分かったよ。」
皮肉をこめてみても通じない。見た目では年下なのに母でも相手にしているようだ。
「ルフィ船長。しばらくここにいても?」
「おう!ライアなら大歓迎だっ!」