「そんなことでもねェ限りおれはこの海を逆走したりしねェよ。…ライアと違ってな。」
船長ルフィの兄の登場は勿論クルーを驚かせたが、兄エースの言葉によって更に驚くことになる。
ライア、という名前を聞いて目を輝かせる者二名、訝しがる者数名、好戦的なオーラを纏う者…とまぁ様々な反応がある中。
「んー?だって逆走も何も…進行方向がないからねー。」
逆走とは言わないよ、と不可思議な言い訳が後ろから聞こえた。
全員驚き振り返る。
集まった視線にライアはやぁ、と片手を上げて答えた。
「ん?なんだ気づいてなかったのか?」
「まぁ向かいあっていたのはエース、君だけだからねぇ」
ほのぼのと会話を続行する二人に、すかさず突っ込みが入る。
「ちょっ!あんたいつから…ってライア・アルーフっ!?」
「どうしたナミ、知り合いか?」
「違うわよ、賞金首!二億ベリーの!」
ナミの言葉にウソップは柱の影に走る…が、いつも一緒に怖がるチョッパーの姿が見当たらない。
「あぁ、勝手に乗っちゃって、ごめんなさい。まぁ落ち着いてよ、何もしないから。ナミさん、ウソップくん。」
名前を知られていることに二人は恐慌に陥るが、そんな心配をざっくり無視した声があがる。
「ライアさんっ!」
「ライアかっ!?」
「ライアじゃねーか、久しぶり!今日は懐かしいやつにいっぱい会うなぁ。」
「ん?ビビも知り合いか?」
「え、えぇ…チョッパーくんも?」
「あ、おう…ルフィも知り合いだったのかっ!?」
わたわたと台詞を被せあう三人を見て、ライアは笑う。
「久しぶり、ルフィ、ビビ、チョッパー、ゾロ。ありがとう、サンジ。」
なにやら和やかになり、サンジに至ってはデザートを振る舞う始末。
ナミも受け取りながら、サンジに問う。
「ねぇ、あの子と知り合いなの?」
「はいっ!クソジジイの上客らしくって…ってウソップ!まさかお前ライアちゃんの麗しいお顔を忘れやがったのか!」
いきなり話を振られて焦りながらも、ウソップは記憶を辿る。
「クソジジイってことはサンジのレストラン…あ!そういえばいた!鷹の目とやけに親しそうだったような…」
「鷹の目のミホーク!?余計ヤバいじゃないの!」
更なる恐怖に襲われたナミからはがくがくと揺さぶられ、サンジからはあんな美人を忘れるなんて!と蹴りをくらう。
さんざんな扱いだ。