「じゃ、俺メシ食って情報収集するわ。」
「おー。ありがとね、あったかかった!」
エースと別れライアが向かった先には人だかり。
国は非道な国王がいなくなった喜びに湧いていた。
「こんにちは。Miss.くれははどこにいらっしゃいますか?」
「嬢ちゃん病気か?この国には医者が戻ってきたんだ、"魔女"に会いにいかなくても…」
「なんたってあのワポルがいなくなったんだ!」
「へぇ…国王はいなくなったのですか。いえ、私は医者ではなくこの国のトップに会いたいの。」
「ならドルトンさんだな!」
おーい、ドルトンさんはどこにいる?との呼びかけを受けて現れたのは一人の男。
彼に向かってドルトンさん、けがをしてるのに何してんだ!と声がかかったのを見るあたり彼がそうなのだろう。
「いや、わたしに用があるらしいから…」
「貴方がこの国のトップになるのかな?…あ、あの時の悩んでた人。」
「貴女は…ライア・アルーフさんですかっ!?」
「おぅドルトンさん、この嬢ちゃんに会ったことあるんですかい?」
「あ、あぁ…数年前王族の会議で…」
「ビビ王女はどこに!?」
「まったく好奇心の強いお方だ…」
「まーっはっは!どこのガキかと思ったら前俺様に楯突いた奴じゃなーい」
ワポルはビビの髪をつかんで高らかに笑う。
以前こうして痛い目をみたことはすっかり忘れているらしい。
いや、前回の雪辱をはらそうとでもいうのか。
「ワポル様、お止め下さいっ!」
「うるせぇドルトン、ひっこんでろ!」
アラバスタの関係者が近くに見当たらない。ドルトンは己のとるべき行動を慌てて考える。
その時現れたのがライアだった。
ス、とワポルの目の前に刀が突きつけられる。
「何してんですかアンタ。あ、ビビ、イガラムさん達が探していたよ。行ってきな。」
いとも容易くビビをワポルの腕から解放し、その背を押す。
「あぁん!?オメー何してくれてんだっ!俺様を誰だと」
「迷子の王女様を保護者の元に帰した。で、アンタは多分ドラム王国の国王だ。」
にべもなく言い放つ彼女にワポルは激昂する。
「てんめぇ…このワポル様に刀を」
「私現在この会議の警備をしております。下手な騒ぎを起こさないで頂きたい。」
いやに慇懃な口調になったものの馬鹿にするような視線は隠そうともしない。
「あぁ会議が始まりますよ。私に何を仕掛けるのも自由ですが、"会議の邪魔をする要素を排除しろ"としか言われておりません。よって私には貴方への攻撃に何の躊躇いもないということを忘れずに。」
淡々と脅しにしかならない言葉を紡いだライアにワポルは舌打ちをして去る。後ろに続こうとしたドルトンに声がかかった。
「貴方は優しい人のようですね。…あの王様の下にいるとその内見るに耐えないことに遭遇するかもしれないですよ?」
「…それでも、わたしには守るべき国民が居る。」
「そう。余計な口出しをしたみたいです。健闘を。」
「本当に国民を守りきったんだね、貴方は。」
「…すでに数百の民を失いました。わたしは守りきることが出来なかった…!こんなわたしが国王になど…」
「そう。でもまだ生きている人がいる。彼らと新しい国を作っていけるのは多分貴方だけだよ。亡くなった人達を忘れちゃいけない。でもそれにとらわれて目の前のものを失ってはいけないよ?優しい貴方はきっと後悔するから。」
「…良く考えてみよう。それで君はどうしてこの国に?」
「あぁ。ドラム王国は滅びたんでしょう?新しい国を作るなら国のトップと国名と政治方針を世界政府に提出しろって。できるだけ早めに。」
「なぜ君がそれを?」
「や、ただのパシリみたいなものですよ。じゃ。」
一体誰の、とドルトンが口に出す前にライアは体を翻していた。
「食い逃げだーっ!」
「あ、すみません店主さん。私彼の連れなんで代わりに払いますよ。」
「あ、あぁ。ありがとよ。」
まったくエースめ。
食い逃げなんかで白ひげの名が落ちたらどうするんだろう。