扉とも異なる。
ぬらぬら
てらてら
そんな形容詞が似合いだった。
地球は苦しくないのだろうか、一分の隙もなくアスファルトに覆われて、さ。
黒々とした地面は雨を吸い込み街灯を反射して。
ワインの回った頭でぼんやりとそれを眺める。
満身創痍だ。
継ぎ接ぎされた痛々しい姿。何千何万という人間に休みなく足蹴にされても無言を通す雄大な。大自然に負けるとも劣らない。
そこだけは違った。新しく舗装されたのだろう約一畳のスペースは他にも増して艶やかで。
手や足を差し入れればとぷり、と沈むのだろう。
そこを通る必要はない。一歩横にずれて進めば10分もせず帰宅できる。ちょっと速く歩けば日付をまたぐこともないかもしれない。
しかし。
どうしても其れに触れたかった。この呆けた頭の想像など打ち壊して、あの堅固な肌触りが返ってくるのだろうか。それとも。
試して、みたい。
覚束無い足取りで、一歩。
(その後など知るはずもなく。)
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