「久しぶりだねぇ、飛鳥。」


少女は窓枠に腰掛けて、ほんの少し拗ねたように言う。

突如侵入してきた彼女を、青年は微笑で迎える。

完璧な、微笑で。


「珍しいですね、茜。お久しぶりです。」


「…飛鳥は本当に、いつ会っても王子様なんだね。」



悲しげに囁かれたその言葉に青年は軽く瞠目してから柔らかく笑む。


「くす…それならば茜はお姫様、ですかね?」


「む。私は私だよ。」


「ええ。でも…



王子様の愛する人を、物語ではお姫様と呼びますからね。」




色づく顔を青年から背け、少女は言葉を絞り出す。



「ばかみたい。」



…くだらない嫉妬なんてしてた、自分がね。


貴方はいつだって私を見てくれていたのに。




みんなの王子様は、私だけの飛鳥になった。


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