裏表ワンセルフ | ナノ





今日は岳人と亮ちゃんとジロちゃん、私で遊ぶ日だ。




亜美には悪いことしちゃったな…




こんどなにかおごろう…。




そんな気分でやってきた遊園地なのだが、この歳になってもやっぱり遊園地というのは楽しいもので、亜美へのそんな気持ちもすっかり忘れ楽しんでいた。





「名前ちゃ〜ん!次は俺とあれ乗るC〜!!」




「いいよー!!」




「あんまはしゃぎ過ぎんななよ?」




「まったく、本当に名前とジローは子供だよな」




「がっくんだってすっごく楽しんでるくせによく言うC〜!!」






上からジロちゃん、私、亮ちゃん、岳人、ジロちゃんの順だ。




ジロちゃんが言った通り、岳人だってすごくはしゃいでるくせに、大人ぶっちゃって!…、そういうところは昔から変わらないのにな。いつの間にか皆は変わっていった。皆はテニス部に入り、努力してレギュラーの座を勝ち取って、いつもキラキラしていた。なんだか、私だけ置いていかれた気がして正直悲しかったのを今でも覚えてる。





楽しい遊園地で私は何を考えているんだと思ったと同時に何か冷たいものが私の頬に当てられた。




「ぎゃっ!」




「ふはっ、名前変な声出してんじゃねーよ!」




「がっ、岳人っ!?ちょっ、何して」




「んー?別に、なんでもねぇけど、なんか名前の様子がおかしな気がしたから」





そう言ってはにかむ岳人。そんなの反則だよ…。私の頬はいつの間にか、岳人の髪と同じ綺麗な赤色に染まっていた。






▼岳人にときめきながらもみんなと時間を忘れ、楽しく遊園地を満喫していると。





いつの間にか、空が綺麗な朱色に染まっていた。





「もう、そろそろ帰るー?」




「そーだな」




「A-!俺最後にあれ皆で乗りたいC〜!!」




そう言ってジロちゃんが指差したのは、夕暮れという手助けもあり見事にカップルの行列ができている観覧車だった。岳人や亮ちゃんはあまり乗り気とは言えなかったが、ジロちゃんがあまりにもだだをこねるので、渋々といった感じでカップルで溢れる観覧車の列に並んだ。その間も今日は楽しかった!などのたわいもない会話をしつつ、私たちの順番がやって来るのを待った。




「お待たせしました。次のお客様ぞうぞ〜!」




「やっと順番回ってきたC〜!」




そう言ったジロちゃんに賛同しようとしたら、急に私の手が引かれた。




「ちょっと名前借りるぞ。」




この声は…。






唖然とする2人を残して私たちは観覧車に乗り込む形になった。




私の腕を引っ張ったのは…






亮ちゃんだった。





「えっと…。亮ちゃ」




「なぁ、なんで俺は名前呼びじゃねぇーの?」




「えっ?」




「…質問を変える。なんで岳人のことは名前呼びなんだ?」





私の言葉を遮り突然の質問をしてきた亮ちゃん。




2回目の質問に私の頭はフリーズした。




いつもの雰囲気とは違い、何か怒っているような気がした。




「べ、別に理由なんてないよ」


「嘘つくなよ、名前岳人のこと…好きなんだろっ?」




「ち、ちがっ!」




「そんな顔真っ赤にして反論しても説得力ねぇーよ」




亮ちゃんの言葉に反論できなくなってしまった。




「…、なぁなんで岳人なんだよ。


あいつ彼女いんじゃん…。なんでだよ…


そんなん、名前が辛いだけじゃねーか…!」




…。




…そんなの私が一番知りたいよ。



辛いのは十分知ってるよっ…




だけど、好きになっちゃってたんだもん。




今更、気づかなきゃよかったなんて思いたくないじゃん



でも、この想いを誰かに…、たとえ大切な幼馴染にでも知られてはいけないものだから嘘をつく私をどうか許してください。




「別に、好きじゃ…ない…よ?


確かに、好きだったことはあるけど、そんなの結構前に吹っ切れたし、今は全然恋愛的な感情はないよ」




そう言って私は精一杯の笑顔で笑った。





「じゃあっ!!なんで、そんなに…」








名前は泣きそうな顔で笑ってんだよっ!!




そう叫んだ亮ちゃん。




ごめんね亮ちゃん。これは気づかれちゃいけない想いなの。お願いだから、これ以上惨めな私に気づかないで…。





私は亮ちゃんの口に手を当てて、唖然とする亮ちゃんの耳元で「ごめん」とつぶやいて、内緒のポーズをとった。




亮ちゃんの口から手を退けるのと同時に私の頬に一筋の雫が流れた。





意識してるって気づかれたら終わりだね




(アナタが気づいたものは)





(幸せな未来などなく、終わる未来しか残ってない)





(誰にも気づかれてはいけない)





(そんな馬鹿で悲しい恋)




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