8.君の涙にキスをした


赤也said

急な雨で四天宝寺との練習試合が中止になった。



まだ財前との試合の決着がついてねぇってのに。




財前とごんべいは幼馴染らしく、試合で財前に勝たねえと俺とごんべいのことを認められないとかいってきたからいつも以上に真剣に試合に取組んだ。




いま思えばあいつが認めようが認めまいが俺たちには関係ないのに。




でも、そんなこと気づかないくらいあんなに試合に熱中したのはそれほど#nsme2#のことが好きだからで。




そう考えたら無償にごんべいに会いたくなって、部室を見回したけどごんべいはいなくて、試合のことを思い出して不安になった。




もしかしたら財前の方に気持ちが移ちまったんじゃねえか



…なんて普段の自分なら考えつかないほど弱気で、この弱い自分を打ち消したかった。



さっきから部室を見回してはそわそわしてた俺に気づいたのか、幸村部長が若干苦笑しながら

「ごんべいちゃんなら四天宝寺の財前くんのところにお別れに行ったよ」


と教えてくれた。



幸村部長に一言お礼をいって後ろで何かを言っている真田副部長を無視して四天宝寺が使ってるスペースにむかった。







四天宝寺のスペースに着くと、ごんべいが輪の中には入らずにただぼーっと一点を見つめていた。



目線をたどっていくと見ているのは財前で、さっき思っていたのが実現してしまったのかと焦ったが、どうやらそうでもなさそうで





ただ、ごんべいが寂しそうで。





思わず後ろからごんべいを抱きしめた。



ごんべいは驚いたのか肩をビクッと震わせていたけど、俺だとわかるとくるっと反転して俺の背中に腕を回した。



「どうしたんだよ」


なんていつもより優しく声をかけるとごんべいはゆっくりと口を開いた。




「ずっと、ずっと一緒だったんだ。光とは小さい頃から。だけど私が知らないうちに光は成長してたんだ。…それがなんだかおいてかれたみたいで寂しい。ねぇ、赤也。私は…」


変われたかな?



なんて普段のごんべいらしくないことをいって、泣いて。




そんなの





「変われたに決まってんだろ。」



だって



「いまは俺がいるんだから」




そう自信を持っていうと、そうだね、なんていって泣き笑いをするから俺もちょっと笑って


君の涙にキスをした


(財前が一番君を知ってるなんて悔しいから)
(もっと、もっと君を知りたい)



(なんて俺らしくもねえけど)





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